急性心不全の薬物治療【3つの主病態と慢性心不全治療との違い】

心不全患者をみていくときに難しいのが、
患者さんの病態によって治療薬や観察の仕方が異なること

看護師はそれに合わせたケアを考える必要があるため、
急性期治療の場であるICU/CCU、またはそこから慢性期に向けての治療薬の移行期で、
しばしば医師の判断がよく分からなくなることがあります。

新人さんや、循環器内科病棟に異動したての看護師さんにはハードルが高いが、
知らないとやばい心不全の薬物治療。
そして、慢性期に移行した時に、薬の効果が全く異なることも心不全治療薬の特徴です。
僕も相当苦労しました。

なので今回の記事では、

・そもそも急性期と慢性期の治療薬の違いとは
・急性期の治療薬を選択する為に理解すべき3病態
・急性心不全の治療薬の特徴

以上についてまとめます。

では、参ります。

けいた
この記事を書いているのは、看護師歴10年ちょっとの者です。
普段は、専門看護師、心臓リハビリテーション指導士として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。

 

□急性心不全と慢性心不全の治療の違い

この2つの心不全の目標が理解できないと、治療薬の選択や違いの理解が困難となり、
患者さんに間違った教育をしてしまう可能性もあるので、しっかり知っておいて下さい。

まず急性心不全は、

「心臓の構造的および/あるいは機能的異常が生じることで、心タンポナーデ機能が低下し、心室の血液十万や心室から末梢への血液の駆出が障害されることで種々の症状・徴候が出現あるいは悪化した病態」

となってますが、
要は心臓の働きが急激に悪くなり、役割が果たせずに症状が出ることをいいます。

それに対し、慢性心不全は、
生活するだけの心臓の役割は果たせている。
だけど、心臓を働かせすぎると役割が果たせなくなるかもしれない状態

つまり、心不全が常にある状態⇒慢性心不全“状態”ということになります。

過労、肺炎、水分の貯留などが原因で心臓に負担をかける(働かせすぎる)と悪化して急性化する状態ですね。

つまり、慢性心不全状態の人が、何らかの原因で急性心不全を起こす、
治療をして症状のない状態まで戻すけれども、その人は慢性心不全状態から脱したわけではないということです。

したがいまして、

急性期は、心臓の役割を軽くしたり、心臓の役割を肩代わりする治療をして症状を取る事が治療の目標となり、

慢性期は、この慢性状態を維持し、苦痛なく生活が続けられる、上の図の坂が緩く長く続くような治療をすることが目標になります。

これらの違いを知った上で、やっと急性期の薬物治療について話を進めていきます。

 

□急性心不全の3つの主病態

急性心不全患者が入院してきた際、うっ血によって呼吸苦などの症状が強い病態、もしくはうっ血に加えて血行動態が悪くなっている病態の大きく2つに分けられます。

さらにそれらを3つの主病態に分けると、

①低灌流
②心原性肺水腫
③体液貯留
があり、それらに合わせて治療が決められていきます。

1つずつ説明をしていきます。

①血行動態の崩れている低灌流

臨床所見から、まずは血行動態に異常あるかどうかを確認します。

それにより、心臓の重要な役割である、血液が臓器に送れているかを知る必要があるからです。

心不全の場合、呼吸症状に最初に目が行きますが、
呼吸が苦しかろうが、心不全が増悪しても呼吸で代償しようとすることで、
息切れや呼吸困難感という症状になります。

しかし、血行動態の破綻が起きると代償が出来てないということになるので、
苦しいだけではなく命の危険に関わってきます。
血行動態に影響が出ている心不全状態を、低灌流(LOS:Low Output Syndrome)といいます。

低灌流の評価は大変難しく、
スワンガンツカテーテルを右心に向けて挿入しないと正確な評価はできません。

そのため、入院時の血圧(<100mmHg)や末梢の冷感などの所見から、
タイミングを逃さず強心薬を適切に使用することが重要と言われています。

カテコラミンという強心薬が代表されますが、詳しくは後で。

②肺循環にうっ血を来たす肺水腫

そしてもちろん、呼吸不全が進行すれば血行動態に影響は出てきますので安心はできません。
呼吸不全の原因の1つとして心原性肺水腫というものがあります。

これは、左心室よりも先、末梢に向かう動脈における抵抗(後負荷)が上昇する事により、
左房圧が上昇し、肺胞の上皮結合の破綻から、血漿成分が肺胞内に漏出することで起こる病態です。

後負荷は主に収縮期血圧によって規定され、入院時の血圧が高いと心原性肺水腫が疑われます

なので、血圧の上昇とレントゲンにより肺水腫が疑われた場合は、
血管拡張薬により、心臓より末梢の血管抵抗(後負荷)を減らすことで一気に改善するのが特徴です。

もちろん他の病態が絡んでいるので、血管拡張薬だけでは改善しない場合もあります。

③体循環にうっ血を来たす体液貯留

そしてもう1つの呼吸不全の原因が、体液貯留による胸水です。

夜間の発作性呼吸困難や起坐呼吸などはこれらが原因の事があります。

体液貯留については、一概に胸水が起こるとは限らず、
下肢浮腫や腸管浮腫などで出現が確認される場合もあります。

したがって、患者の入院前の自覚症状の経過を注意深く確認することで、
心不全の増悪のタイミングを計るための教育的関わりができると思います。

これらは症状をとるためには、
強心薬により腎血流量を増やすことや、利尿薬により排泄を促進することが一般的です。

ですが、どちらも腎機能への影響が無視できないこと、
心不全患者の多くが元々腎機能障害をもっていることが少なくない事など、
薬剤の使用に注意が必要なことが多い為、
僕ら看護師は、患者の体液を管理する上で、インアウトだけではなく、
腎機能の悪化がないかを確認し、主治医と連携をとる必要があります。

 

□覚えておくべき急性心不全の治療薬

3つの主病態は、完全には分かれていないので、治療薬もはっきり分かれるわけではありません。

そのため、強心薬+利尿薬、血管拡張薬+利尿薬、といった組み合わせで使われることも往往にしてあります。

が、ここでは、3つの種病態に対する代表的な、急性期治療薬である、

・カテコラミン
・血管拡張薬
・利尿薬

について話していきます。

①カテコラミン                                                 

ドブタミン(DOB)

β1作用(強心、心拍数増加)と低容量でのβ2作用(血管拡張作用)が期待できる

低灌流所見あるいはうっ血徴候を伴い収縮期血圧あるいは心係数(心拍出量の指標)が低い場合に使用することが勧められており、

できる限り早く投与し、低灌流やうっ血のために使用されるべき薬です。

ドパミン(DOA)

主にβ1作用(強心、心拍数増加)とα1作用(血管収縮作用)があり、

高用量になると主にα1作用による昇圧剤としての効果を目的として使われることが多い。

心不全においては低灌流が改善しない時に選択されることがあり、心拍数が100/分を超える患者には不整脈を起こしかねないため、急性期治療ではあまり優先されないことが多い。

しかし、最近では腎血流量の増加作用に再度注目を集めています。

PDEⅢ阻害薬(ミルリノン、オルプリノン)

β受容体を介さずに強心作用及び血管拡張作用を発揮する、強心血管拡張薬とも呼ばれる。

PDEⅢ阻害薬かDOBが第一選択されることが多いが、どちらかでは効果が弱い場合は、ともに低容量で併用することある。

特に、β遮断薬を内服している心不全患者の急性増悪には有用であると言われています。

ノルアドレナリン

β1作用(強心、心拍数増加)と末梢のα受容体に働く強力な末梢血管収縮作用を有し、
主に、心原性ショックの昇圧目的に使用される。

末梢血管抵抗の増加により平均動脈圧が増加する、また心筋酸素消費量を増加させ、腎臓、脳、内臓の血流量を減少させるので、
末梢循環の悪い心不全増悪時の強心薬として単独投与されることは少ないです

 

②血管拡張薬

硝酸薬(ニトログリセリン、イソソルビド)

世界的にもっともポピュラーな薬物。

低用量では静脈系用量血管を、高用量では動脈系抵抗血管も拡張する。

それにより、前負荷軽減効果(肺毛細血管抵抗低下)および後負荷軽減効果(末梢血管抵抗低下による心拍出量の軽度上昇)を発言するとともに、
冠動脈拡張作用により虚血性の急性心不全にも使われます

肺水腫に有効であるのと同時に、副作用として血圧低下、肺胞シャントの増加由来のPaO2が低下する可能性があるとされています。

ニコランジル

硝酸薬としての静脈系拡張作用に、KATPチャネル開口作用に起因する動脈系拡張作用を有する。

硝酸薬より薬物耐性が生じにくい上に、心筋保護作用があることから、虚血を伴う心不全や心筋梗塞に使用されます

めた、血圧が高いほど降圧作用が増し、血圧が低いほど降圧作用が低くなるという特徴をもつと言われています。

カルペリチド(hANP)

動静脈拡張作用、ナトリウム利尿作用、RAA(レニン・アンギオテンシン・アルドステロン)系抑制作用、交感神経抑制作用などの薬理作用をもつ。

血管拡張だけではなく利尿薬としても使用されます

しかし、容量負荷のない場合(脱水、食欲低下)は、血圧低下を来たしやすいので、循環動態の評価を合わせて行うことが重要です。 

 

③利尿薬

ループ利尿薬(フロセミド、ラシックス)

ヘンレループにおけるNaの再吸収抑制によって利尿を促進する。

心不全の体液貯留の治療に対しなくてはならない薬であり、ガイドラインでもクラスⅠ適応である。

少量でも利尿効果を図ることが可能な反面、
血管内容量や腎機能への影響などから投与のタイミングや投与方法(ボーラス、持続点滴)などの調整を行う必要があります。

トルバプタン(サムスカ)

急性心不全では、うっ血の悪化や循環不全のストレスからバソプレシン(抗利尿ホルモン)の亢進により、水貯留が起こりやすい。

トルバプタンはこのバソプレシンの効果を抑制することで利尿を促します

この状況においてループ利尿薬だけで体液管理ができない場合に推奨される。

ループ利尿薬やK保持型利尿薬と併用されることが多いので、
電解質異常、血管内脱水などがないかデータを見ながら確認する必要がある。

カルペリチド(hANP)

血管拡張薬でも取り上げたが、心不全治療のための多くの作用をもつ。

腎保護的にも効果が期待できつと言われています。

僕自身は、利尿目的に使用されているイメージが強いです。

 

□まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回の記事だけでは詳しい薬の理解は難しいかもしれませんが、

自分が担当する患者に使われている薬が、心不全による患者に何に対して使用されているのかは主治医と共有できると一気に理解が深まりますよ。

逆に慢性期治療は、これら静脈注射していた薬を内服に切り替えるという単純作業というわけではありません。

慢性期はむしろ、心臓に負担をかけない薬を多用しますので、
ACE阻害薬/ARBやβ遮断薬の血圧や心拍数を抑える薬を使用し、心保護を優先した薬に変わっていきます。

しかも、急性期と違い、目に見えて症状が取れる効果を期待するものではないので、それらを患者さんに理解してもらうための教育は困難を極めます。

患者の病態から治療薬の選択にどのような意図があるのかがわかると、
慢性期治療や患者教育にもいかせてくると思いますので、
これを機に勉強してみてはいかがでしょうか。

 

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