普段は専門看護師として、慢性疾患患者への看護を専門とする傍、心不全患者への教育やセルフケアに関する看護について積極的に取り組んでいます。
その一環として、心臓リハビリテーションのシステム作りをしながら、看護師や他職種の教育にも携わっております。
一昨年に心リハ指導士を取得し、現在までに1年半がたち、今月中には腎リハ指導士の認定証をいただく予定です。
腎リハに関してはまだ未活動ではありますが、今年度中には透析予防外来にて糖尿病をもつ患者への介入を行う予定です。
そこでは心リハのシステム作りで培ったノウハウが活かせるといいなと思っています。
さて前置きが長くなりました。
先日まで、職場の看護師さんの心リハ指導士認定試験の申し込みの手続きにおいて、
自験事例の添削を行なっていました。
それを行う中で自分が学んだことや、来年以降受験を検討している方の手助けをしてけたらと思いブログにまとめていこうと思います。
今回の記事では、
・どれも症例報告が似通ってしまう
・どこまで情報を持っていればいいの?
こういった悩みを持つ人、これから他施設で心リハの研修を受けにいく人(研修施設で自験例を記載するので)を対象に記載をしていきたいと思います。
では、参ります。

Contents
■記載の基本
1つ断っておきたいのは、ここでいう自験例報告と症例報告は同様の意味で捉えてください。
心リハでしか自験例と言わないので、症例の方が馴染みがあるのではないかと思いそちらを多用していきます。
しかし、学会のHPなどでは自験例報告書となっていますのでご注意ください。
□【要確認】記載のルール
これに関しては言うまでもないことですが、
この記事の前提として知っておいて欲しいことを簡単に記します。
まず、心リハ指導士の認定試験のためには症例報告をまとめるには、基本的なルールがあります。
1つ目は、学会HPにある自験例報告書を使用すること。
これは受験をする年に発表されたものをダウンロードすることが決まりです。
2つ目は、募集要項の「症例報告について」が基本ルールであること。
症例報告の大前提として学会は、「様々な心疾患に対して標準的な心臓リハビリテーションを実施してきたことを証明できていなければなりません」と記しています。
つまり、心リハにおける時期的区分(※)、対象疾患、運動耐容能などに合わせて心リハを行う必要があり、それを表現できる知識と経験が必要となるのです。
※時期的区分:心リハは幅広い内容と長い期間を包含する概念であり、発症から離床までの「急性期心リハ(PhaseⅠ)」、離床後、社会復帰までの「回復期心リハ(PhaseⅡ)」、社会復帰後に生涯を通じて行われる「維持期心リハ(PhaseⅢ)」に分けられる。
これに関しては次の記事で解説予定です。
それらを加味して記載をしていくわけですが、実際にはA4用紙1枚に書けることなど限られています。
だからこそいくつかのポイントと裏ワザが存在するのです。
この症例報告は書類審査ですので、
その審査をする人に対するアピールをするには正攻法だけではまずいし、
嘘いつわりを並べてもダメなんですよね。
そういったことを今後お話しできればいいかなと思っています。
□職種としての専門性を生かす記載のために知るべきこと
記載のルールは絶対に重要ですが、
そのルールに沿って書くだけになってしまうと、患者の個別性どころか職種間の違いも出なくなる可能性があります。
たくさんの患者情報をいかに抽出し、いかに専門性を持って表現するかがポイントなのです。
そのために重要なことは2つあります。
1つは、職種に関係なく同レベルで記載できなければいけない部分を把握する。
2つ目は、職種ごとの専門性を表現するための情報を漏れなく簡潔に追加しておく。
これらは明確には分けられませんが、僕の目安として、
「自験例報告書」フォーマット最後の【心臓リハビリテーション考察】は専門性を発揮すべきところであり、
頭から【運動指導と患者教育】までの考察以外の部分は心リハに専門的に携わる人であれば同レベルでの記載が求められる部分であると認識しています。
つまり、患者の現病歴や検査データから、運動耐容能や生活上の課題を評価し、運動処方と患者教育を考える技能は、心リハ指導士には必須であるということです。
逆に言えば、それができてしまえば自験例報告書の記載は8割はできてしまうと言うことですね。
そこまで記載ができてしまえば、あとは考察部分において、
自身の専門性、僕で言えば看護的な視点で患者への看護、または他職種とどのように協働して、患者のQOLを上げていくか、ということを考えていきます。
考察をするためのコツをあげるとすれば、
【その他リハビリ進行上考慮すべき点】を有効に活用することが重要です。
ここには、心リハに関わり、なおかつ専門的視点を重視した情報の記載が可能です。
むしろ、記載者である僕しか視えない専門的視点での患者の特徴や言動、思い、スケール評価などを置いておくことで、
考察で自分の専門性を加味した考察を行うことができるので、
採点者がリハビリというチーム医療の中で活躍できそうかどうかを判断することができるのです。
余談ですが、病棟看護師さんはこの辺りが得意そうであまり得意ではありません。
患者の退院後の生活を想定してケアにあたるのが、急性期病院の看護師の大きな役割ですが、
退院後の患者さんを知るすべを持たないのです。
したがって看護師は、いかに退院後の患者の姿を想像し、
患者のためのリハビリを考えられるか、が重要です。
その辺りのことを症例報告の書き方を示す中で共有していきたいです。
■カルテの見方
□どの時期を切り取るのか
先ほど心リハには時期的区分があることをお伝えしました。
症例を10例選択する際、10例それぞれを急性期、回復期(入院中と退院後)、維持期でバランスよく分ける必要があります。
自施設のリハの業態にもよるので(クリニックなどでは急性期治療がないなど)、
必ずしも3例ずつとかにする必要はないです。
しかし、症例報告の意味は、心リハ指導士になる上で1年以上心リハの経験をつんでいることが証明するものです。
したがって、経験の有無に関わらず、これまでの経験や知識を統合する力を試されているので、
さまざまなパターンが記載できることが重要です。
特に心血管疾患は、長く病気と付き合っていかなければならず、
療養生活を死ぬまで続けなければいけません。
だからこそ、時期的区分それぞれをバランスよく記載する必要があるのです。
時期的区分を意識して記載して行く際、患者の療養家庭のある1時点を切り取って、
どの時期にどのようなリハビリをしなければいけないのかを、各時期の目標に合わせて検討できることが重要です。
医師や看護師は急性期の方が患者把握が得意かもしれませんし、
PTなどは回復期に入ってからの方が患者把握が得意かもしれません。
なので普段から、自分があまり関わらない時期であっても、
各時期の患者目標を意識して、カルテを開いて情報を追えると入ってくる情報の質や患者増の見え方が変わってくるかもしれません。
□これだけは見ておこう
運動耐容能の評価と実際の運動処方の詳しい内容は把握しておくといいです。
簡単に言ってしまえば、心肺運動負荷試験(CPX)はもちろんなのですが、
その他PTによる運動負荷試験(6分間歩行、10秒椅子立ち上がりテストなど)の結果や、
運動負荷試験が行えない患者に対する運動処方などについてはしっかり見ておくといい。
なんなら、直接その内容と判断を聞けるといいと思う。
このご時世、心疾患で入院してくる患者や、外来心リハにこれる患者の多くは高齢者であり、
実際にCPXを漕げない患者も少なくない。
また当院のように循環器内科はCPXはみれるけど、心臓血管外科はみれない。
(検査にも立ち会えないのでオーダーすら出ないというなんとももったいない病院なのです)
そんな時は、これまでの自宅生活や入院中の運動負荷から、安全域を評価し、運動処方をすることがあります。
そういった判断の仕方は、教科書にはない貴重な情報ですので、そのような経験をされたかたはぜひ控えておくといいと思います。
カルテや教科書にない判断のかけらを、いかにカルテから拾うか、
そう言った話もできたらいいなと思います。
■まとめ
いかがでしたでしょうか。
こちらのカテゴリーでは心リハや心リハ指導士に関する情報発信を行なっていきたいと思っています。
循環器疾患患者の特徴やチーム医療の促進など、
現場で活かせるコンテンツを目指していきたいと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
普段は、専門看護師、心臓リハビリテーション指導士として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。