看護師による意思決定と倫理【コードブルーから導く看護】

「なんで手術に同意してくれないのだろう」

ドラマ「コードブルー」第3話で、新垣結衣演じる白石が、脳腫瘍の手術を拒否する一人の女性に関わり、頭を悩ませる。
そこには患者の生きていくことへのある思いが隠れていることが最後にわかります。

医療における意思決定というのは、医療者にとっては当たり前でも、患者、家族にとっては全く違う景色にみえることも多々あります。

そんな時、看護師とはどのような役割を持つのか、
そして、看護師と患者の中で行われる意思決定にはどんなものがあるのか考えてみたいと思います。

 

けいた
この記事を書いているのは、看護師歴10年ちょっとの者です。
専門学校卒で10年目に専門看護師になりました。 普段は、専門看護師として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。

 

Contents

■医療における意思決定

□医療、看護を取り巻く法律

 

医療は、医師が医学に基づき人命を預かることを中心とした公共サービスである、と言われています。

それを定める医療法(昭和23年法律第205号)において、以下のように示されています。

第一条の二
医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の の担い手と医を受ける者との信頼関係に基づき、及び医を受ける者の心身の状じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含むかつ切なものでなければならない。

第一条の四
医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第一条の二に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。

2 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他のの担い手は、医を提供するに当たり、切な明を行い、医を受ける者の理解を得るよう努めなければならない

 

お堅い話ですが、大事なところは下線部であり、

要は、医療者によって提供される治療およびそれに関連した医療サービスは、医療を受ける者への十分な説明と理解を得た上で行われる必要があるということです。

 

□看護師による説明と同意

知っての通り、僕ら看護師が医師と連携をとらず、
患者に無責任に病状や治療の決定について説明することは好ましいことではありません。

当たり前のようですが、
僕ら看護師は、医師と違い、一つ一つの行為にいちいち同意を得ながら(厳密には同意を得ていると思いますが)、ケアを行なっていませんよね。

意識してないとピンとこないかもしれませんが、
僕ら医療者は、患者との信頼関係の上で、治療や医療ケアに関する十分な説明と同意の上でサービスを提供することで業をなします。

しかし、実際はルーチンな作業として看護ケアが行われ、
時々それに合わない患者がいれば業務が進まないと愚痴がでる。
(気持ちは痛いほどよくわかるし、疲労もたまる)

ただ、本来患者は苦痛や不安の中、それに関する知識も対処の仕方も知らないから唯一頼れるのが医療者な訳ですよね。

そこにあぐらを書いてお金をもらってるから(もらってるぶんだけ)サービスを提供すると考えていたら、時給換算に納得がいかないのも仕方ない。

というか、僕ら看護師は自分たちの行う一行為に対してお金が発生しているわけではなく、
病棟に存在することが管理上大事なことなのです。

悪い言い方をすれば、資格さえ持ってれば誰でもいいのですね。

そんなことを言ったら、管理者に対しても働くことが辛い人にも角が立つかもしれないけれど、それは1つの事実です。

苦痛と不安にさらされている相手だからこそ、丁寧な説明と同意が繰り返されることが重要で、
だからこそ深い信頼も生まれるのだと思うのですけどいかがでしょうか。

 

□治療に関する意思決定

 

最初に話した白石先生が困っていた脳腫瘍の患者さん、名前を本山さんという。
白石は、本山さんの夫から息子・直也が2年前に亡くなっていたことを聞きます。

白石は手術をしてもらうために、息子を亡くなった悲しみや、亡くなった息子さんを思う気持ち、忘れられない気持ちに共感を示し、
残された家族(夫)のためにも手術を受けたらどうかと提案する。

しかし、本山さんは首を縦に振ろうとはしませんでした。

「違うんです。違うんですよ、先生」

白石は本山さんを必死に理解しようとしている時、桧山(戸田恵梨香)の心無い言葉に感情が高ぶります。

第3話の最後、白石は本山さんが手術を決定できない理由には、息子を日を追うごとに忘れていってしまうことへの恐怖にあることを知ります。

息子への申し訳なさなのか、本山さんの自分自身への悲しみや諦めといったものなのか、番組からは想像しかできません。

しかし、治療をすることを重要視していた白石は、患者の治療選択に影響する救命医としての新たな見地を得ることができました。

このような場合に限らず、治療やケアに対する患者の思いもそれぞれだし、患者やその家族のもつ生活や社会背景を変えることは、大抵の場合できません。

そういった患者さんが悩む治療などの決定について、その悩みの解決には至らないかもしれないが、
看護師としての意見や励ましは、心強いものになりうるかもしれません。

 

□看護師による意思決定

いわゆる意思決定というと手術などの侵襲をともなう治療や検査に対して、同意書をとる手続きのように思われている方もいるかもしれません。

もちろんそういった手続きの中で行われる説明と同意(インフォームドコンセント)は、とても重要ですし、その手続きにより患者が治療法を選び変更することで、より自分にあった治療を選択できるのであればそれに越したことはありません。

しかし、実際に看護師が関わり説明と同意を得るのは、看護の介入研究などくらいでしょうか。

ただ、先にも話したように、看護師は日々の業務の中においても、患者のニーズに合わせて、さまざまな判断のもとでケアを提案し、納得のもとでケアを実施しているはずです。

中には、自分の意思を発信できない患者さんもたくさんおられるとは思いますが、
そこには患者のニーズに合わせた判断があり、その判断に説明と同意も含まれているはずですし、家族にも今日はこんなことをしました、って報告をすることもあるでしょう。

あと忘れがちなのは、看護計画書というのがあると思います。

クリニカルパスなどに乗ってない患者であれば、

・周術期の合併症を起こさないだとか、
・心不全の悪化の兆候を観察しますとか、
・転倒しないような環境設定をするとか、必要に応じてセンサーを使うとか、
・褥瘡ができないように体位変換を◎時間ごとに行うとか、

そういうことを書いた標準看護計画(場合によっては少し直して)サインをもらいますよね。
あれもようは説明と同意のことです。

最初にも書いた通り、看護師を含む医療者は、を提供するに当たり、切な明を行い、医を受ける者の理解を得るよう努めなければならない、とされています。

看護行為も専門家としての判断や病態的なリスクがある以上、患者への説明と納得が必要です

それを予め計画として示しておき、実際に実施するときの説明を簡便化したり、ケアを変えていくときの患者側の認識とするのですね。

あんまり言いたくはありませんが、
看護には業務は含まれますが、ただ決まった清拭などの行為を繰り返すことは看護とは呼べません、残念ながら。

ただ、きっとそこには危険を予知する判断や異常を見分ける観察力、苦痛を増強させないような技術などがあり、
実際は医療者としての知識技術を使って、看護ケアを行なっています

それを患者や家族、または後輩看護師や学生に伝える知識や技術は、全て看護の力そのものであり、
それを患者との信頼関係のもと、説明と同意を繰り返し、ケアを実施するのが、まさに意思決定のもとで行われる看護そのものだと思っています。

 

■まとめ(意思決定における倫理課題)

脳腫瘍の本山さんは、最後は夫と白石の説得で手術を受けたことになっています(ウィキぺディア)。

患者のその後に関わることでさらに成長することもあるのでしょうが、
救急救命の場なので、そこに重きをおくのもドラマの趣旨と違うのかもしれませんね。

実は、似たようなシーンがseason2でもあるんですけど知ってますか?

そこでは、脳外科の西条(杉本哲太)の代わりに手術に関する説明を白石がするシーンがあります。
その説明の仕方について、西条や藍沢(山下智久)からは「医者らしかった」と言われ、
自分が手術をするように誘導しているような説明になっていたのではないかと、疑問を持ちます。

術後、命が助かる代わりに記憶を失った患者と、その妻をみて本当に手術をしてよかったのだろうかと悩む話がありました。

その手術に関し、看護師の冴島(比嘉愛未)が手術をしないという選択肢もあるのではないかと、患者の妻に寄り添うシーンがあります。

白石は冴島に対し、「それは患者が決めることでしょう」と、妻への説得を止めたこともあったので、余計にわだかまりが残ったのでしょう。

このように医師と看護師とで見解が変わることもあり、患者や家族のニーズをいわゆるパターナリズム的に説得してしまうのは、たとえそれが正しい判断だったとしても、
振り返る必要はあるかもしれません。

仮に見解が医療者同士で違ったら、そこは専門家同士話し合いをしなければいけないでしょうし、
普段から患者との信頼関係のもとでケアを実践できている看護師は、
医師との話し合いでも、患者側に立った意思決定支援が可能かもしれませんね。

 

 

 

 

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