急性期病院における退院支援【サービス調整≠退院支援】

看護は意思決定支援だ、なんて聞くこともありますが、
急性期病院における退院支援は、まさにそのことだと思うことがあります。

このまま治療を続ければ少し長く生きられるかもしれない、
治療のことだけを考えたらキリがない、

または、自宅で暮らすのに、それくらい家族がやれば済むなんてこともしばしばある話です。

でも、それは本当に本人の人生にとっていい選択なのか、
家族にとって気持ちよくできることなのか、
答えの出ない疑問を悶々と、そして鬱々と考えさせられることがあります。

そんな困難を患者に認識してもらったり、患者にとっての人生や医療を考えて、
複雑に絡み合った問題を、患者や家族と共有し、解きほぐし、なるべくリアルな問題とのすり合わせをする

そして、行なわれる治療やケアについて意思決定すること、したことが、
100%正しくないかもしれないけど、間違ってないことも一緒に共有するところに、
看護的な退院支援のアセスメント、技術が重要なんですよね

退院支援における看護師の役割、重要性、
そして、退院支援における退院調整とは何かとは、について少しお話しさせてください。

けいた
この記事を書いているのは、看護師歴10年ちょっとの者です。
専門学校卒で10年目に専門看護師になりました。 普段は、専門看護師として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。

 

 

□退院という意思決定の支援

退院支援とは、患者本人がどのような治療や療養支援を受けたいのか、病や障害をもちながらもどのように生活をしたいのか、
希望と現実を擦り合わせながら自己決定するための支援のプロセスであると言われています。

例えば、入院した自分の母親を退院後自宅で介護したいが、
介護する自分も世間一般的には高齢者であり、自分も受診や入院をしている。
子どもには仕事や家庭があり支援を得難い。

実際に働いているとよくあるパターンですよね。
なんなら独居で頼れる人もないことも少なくない。

患者も、迷惑をかけるので家族のいうことであれば、施設でも仕方ない、と無理に納得する方もいれば、
家族に調整をしたくとも忙しいと連絡がつかず、
患者は「申し訳ない」と医療者に言いながらも、家族にも頭が上がらない、といったこともある。

こちらとしては、患者のために支援しているのか、家族のために支援しているのかわからなくなることってありませんか。

更に言えば、病院の都合かよってこともありますよね。

でも、それだけ医療というものが不確実で、不明確なものであることをお互いが理解してないと難しいことなのかもしれません。

僕ら退院支援に携わる者としては、やはり患者のこれからの(残りの)人生の目標に応じた、今あるさまざまな課題(療養、ADL、資金など)を患者や家族と共有して、
患者が選べる(選ぶであろう)選択肢のための教育や調整をしていくことが重要です。

退院後の受診や内服といった療養上の課題、
入院中に得られそうなADLのレベル(トイレにはいけるのか)、
介護系施設や療養病院でかかるお金、など
退院後に医療者から患者や家族に渡されるリアルなバトンはどんなものなのか。

実際にそのバトンを持ってもらうことはできなくとも、
バトンをもって走ることをいかにリアルに想像してもらうか、
そこには看護師や相談員としてのMSW(メディカルソーシャルワーカー)の腕の見せ所です。

 

□患者・家族の思いを引き出すという第1歩

介護する側が介護されるほうになっているパターンはこれから先どんどん増えて行きます。
大抵の人は家族に迷惑をかけないよう、
これまでの生活リズム、関係性を維持しようと努力していることが多いです。

しかし、介護する家族は、患者が入院したことで2つのことに気がつきます。
・病気が悪化して(動けなくなって)しまい、自宅で見れるのだろうか
・母親が入院したことで、自分をケアする時間が増えてとても助かっている

前者は医療者との面談でよく出る問題
後者は後ろめたくて医療者との面談であまり出てこない問題です。

例えば先ほど出た、
入院した自分の母親を退院後自宅で介護したいが、
介護する自分も世間一般的には高齢者であり、自分も受診や入院をしている。
子どもには仕事や家庭があり支援を得難い。

こちらの僕の経験をアレンジしたものでお話しますと、
これまで仕方ないにしても頑張ってきた介護を病院が担うことで、
病気がちである自分自身のケアに時間を回せることがどれだけ心身に重要かに気づいていきます。

今後、こんな体で母を介護していけるだろうか、
娘にはもう自分のこと以外で迷惑をかけられないのに・・・。

そんな思いを日常の看護業務の中で、看護師も聞く余裕がないし、
家族も話そうとして話してくれることはほとんどありません。

退院支援の看護師はそのような場を意図的に作ることで、
患者や家族が、退院後の生活をいろんなバランスの中で決めていけばいいということを伝えていく、共有していくのですね。

そんな話をしていると、
介護をしてきた自分の娘も、親が介護と自分の治療でいっぱいいっぱいになっている姿に苦しんでおり、
家族のために介護してきたつもりであったが、無理をすることで家族(娘)を苦しめることにもなるのだということに改めて気づいていきます。

介護する本人も、自分の家族のために、今一番バランスのいい選択ができることが大事だと思うことができます。
そして、全部抱え込まなくてもいい、任せられるところはどこか、お金などの問題は?
いろんな課題と大事にしたいことを医療者と共有することができれば、
家族自身が医療者と一緒に検討していくことを決めていくことができるようになります。

もちろん、ここには患者の思いも重要ですし、
家族の医療や介護に対する思いもさまざまです。

そういったさまざまな思いを“共有”する関わりが、よりよい高齢、または複雑なケースにおける退院支援をする上で、一番基本的な部分であり、重要なことなんですよね。

だからインフォームド・コンセントが大事なんですけど、
医者は退院後の生活に無頓着であることがほとんどです。
だからこそ、病棟看護師の関わりが重要になるということです。

 

□退院支援は普段の看護実践そのもの

退院調整看護師や訪問看護師を対象にした調査研究では、
看護師は「地域で自立した生活ができるように支援する」という目的のために、
「いま必要なことは何か最善の方法を考える」ことをする中で、
その人の「生活と医療を統合する」という方略を用いることが見出されたとしています。

先に、退院支援とは、患者本人がどのような治療や療養支援を受けたいのか、病や障害をもちながらもどのように生活をしたいのか、
希望と現実を擦り合わせながら自己決定するための支援のプロセスであると言われている、と記しました。

そこには、患者の考える希望が到底叶いそうもない場合もありますし、
それを望むことで患者を支えるはずの家族が苦しい思いをすることもあります。

看護師を含む医療者は、患者のこれまでの生活を知った上で(情報収集)、
病による影響を入院生活の中で認識してもらう手助けをし(療養の世話、リハビリ)、
家に帰ったらどんな困難があり、どれだけ自分らしく生活できるかを共有しながら(受容支援)、
そのために必要なことは何かを伝え(指導)、
家族を含めて、今後必要な社会資源や退院後の療養の仕方を決定していく手助けをすること(意思決定支援)が仕事です。

これは決して特別な作業ではなく、
普段の業務、関わりの中で行われるものであり、退院調整看護師の特殊業務ではありません。

いかに、それを意識して通常の仕事を行うか、は病棟看護師の仕事であり、
それらを導く手助けをしつつ、困難例の裏方でいろんな調整役割をするのが退院調整看護師の仕事だと考えています。

患者にとっての一番の見方はやはり病棟看護師であってほしいし、
その方が患者にとって看護の質も担保しやすいんですよね。

 

□なぜ地域包括ケアシステムなのか

一応、今後国が進めようとしている医療の動向について聞いてください。

2014年に施行された医療介護総合確保法とは、
①効率的かつ質の高い医療提供体制の構築、②地域包括ケアシステムの構築という、
2つの柱を軸に、地域における高度急性期から在宅医療・介護までの一連のサービスを提供する体制を実現し、地域での継続的な生活を可能にしようというものである。

そういった中で、病床の機能分化・連携、在宅医療の推進・介護との連携に重点が置かれ、高度急性期、急性期、回復期、慢性期、施設、在宅ケアといったような、
患者を含めた多くの人々の心身の状態に合わせて治療や療養の場を移行させるシステムとそのためのネットワークが求められているのですね。

更に言えば、今後がんや誤嚥性肺炎、慢性心不全などのような、入退院を繰り返し、地域のかかりつけ医による治療、あるいは外来での治療を継続する患者の増加が予測される。

そのため、疾患を抱えた状態のままであっても、その人が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしが継続できるための支援が必要という話でもあるのです。

そういった背景や取り組みを踏まえ、僕らは地域の中の病院、あるいは看護師としての退院支援を模索していかなければいけないのです。

 

□退院調整とは(まとめ)

患者には、それぞれこれまでの暮らしで歩んできた生活史があり、その過程で築きあげてきた生活スタイルがあります。

看護師は、その人の暮らしをイメージし、病を持ちながら人々がそこで暮らしていくためにはどのような支援が必要か、生活と医療の両方の視点からその人に必要なケアをマネジメントしていく力が重要になるというお話でした。

つまり、患者の力に応じた支援をする中で、
患者の力の不足部分を補うために、多職種や院外との連携を取り、
患者や家族が自分たちをケアする力をサポートする様々なものを調整することを退院調整というのだと考えます。

退院支援はその大きな方向性を決めるための、
いわば受容支援+意思決定であり、
退院調整は、意思決定するため、そしてした後のための裏方(調整)作業なのかもしれない。

ただ、結局のところ、言葉に惑わされずに患者の生活にコミットして退院のための支援を行なって行きたいですね。

 

 

 

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