ゴムの性能から心不全治療をざっくり理解する【2つ視点を持てばOK】

心不全の病態のアセスメントから患者指導をするのはとても難しい。

それによってたくさんの自宅でのタスクを背負った患者さんがセルフケアできなかったら、と思うと責任を感じてしまいます。

もちろん治療方針や教育方針についてはチームで考えるものですので、
看護師の責任とまでは考えなくても良いかもしれません。

でも、配薬のインシデントの責任が看護師にあるように、
最終的な教育の責任は看護師にあると言っても言い過ぎではないと思うんですよね。

なので、今回は教育に活かせる病態、治療の理解初級編です。
この記事では、

・うっ血と低心拍出(LOS)のイメージ化
・心筋のゴム性能から治療を予想する
・無視できない右心不全
についてざっくり理解できることを目的にしています。

右心不全はおまけですが、大事な病態ですので触れて起きます。

では、参ります。

けいた
この記事を書いているのは、看護師歴10年ちょっとの者です。
普段は、専門看護師、心臓リハビリテーション指導士として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。

急性心不全の薬物治療【3つの主病態と慢性心不全治療との違い】

2020年5月15日

□まずは症状緩和

心不全の考える時、心臓の機能や基礎病態に目がいきがちですが、
何と言ってもまずは患者さんの苦痛をとることが重要です。

その原因となっている病態が「うっ血」「低心拍出(LOS:Low Output Syndrome)」です。

この2つの病態は同時に発症することもあるため別物として考えられることが多いですが、
ともに循環血液量などによって規定されることから、
対の関係、またはシーソーのような関係として説明されます。

ここには、有名はFrank-Starlingの曲線というのが関連しています。
 

簡単に説明すると、

うっ血→体液の過剰
LOS→体液の不足
が原因で起こります。

図の曲線自体が人の心機能を表しています。
普段の僕らは、適切な体液量で心臓に動いてもらっているので、無症状ですよね。

心不全の患者さんは図の曲線上、体液量の異常によって左右どちらかに振られてしまうことで、
うっ血かLOSの症状が出ます。

したがって、体液量がちょうど良いところを狙って治療を進め、
症状の緩和をすることが初期治療の1番の目標になります。

したがって、
うっ血に対しては利尿剤、LOSに対しては補液が必要となります。

ただこのうっ血とLOSの概念だけでは心不全治療がうまくいかない理由が2つあります。

1つ目が、先にも話した通り、
対の関係なのに同時に症状が出る時

もう1つが、右心の機能不全がある時です。

その理由を1個ずつお話ししていきます。

 

□心筋のゴムの性能を上げる

うっ血とLOSが同時に起こると、
利尿剤も補液も両方必要なのか、それとも両方使ってはいけないのかという話になります。

実はそれはあってるけど、あってない話になります。

先ほど紹介した、Frank-Starlingの曲線の図をもう一度載せます。
この図は、心拍出量が出せる人ほど上に曲線があり、正常な人を表します。

心不全患者さんの多くは、心筋の伸びがなんらかの理由で悪くなっています。
要はゴムがゆるいか、ゴムが硬くて伸びないかどちらかです。

そのため、本来であれば水を多く入れれば、
その分大きくゴムが伸びて拍出するのが正常なのです。

しかし、ゴムの性能が落ちてますので、たくさん水が入ってくる(前負荷↑)と、前に押し出せませんのでうっ血が起こり、
各臓器に血液が来なければLOSによる症状が起きるというわけです。

さらに、より重症な心不全の患者さんは、この曲線が下方にあるため、
利尿をしても補液をしても、右下のLOS+うっ血ゾーンから抜け出せなくなる自体が起こります。

したがって、症状に加えて、検査から心臓の動きを見たり、
心臓から拍出される血液量を想像しながら、先生たちは強心剤を使用し、
下方にある曲線を上方へと修正を試みます。

急性期から抜け出すと自身の力で上方修正ができるようになり、強心剤から離脱できるようになります。

では、急性期を抜け出すためにはどうすれば良いのか。

急性期は心臓のゴムの性能が著しく低下することにより、曲線が下方に移動しています。
つまり、何によってゴム性能が失われているか、が重要になります。

症状緩和をしながら基礎疾患の治療を同時に進める、
これが重症心不全のポイントになります。

治療方針のためのざっくりな評価
1)基礎疾患の同定と治療
2)心筋の伸びの評価と、原因検索、治療を検討
3)カテコラミンの影響を評価

1)基礎疾患の同定と治療

虚血、不整脈、弁膜症などは原因治療の妥当性の判断に移っていきます。

2)心筋の伸びの評価と、原因検索、治療を検討

QRS幅が広い場合は、CRTの留置が適応か判断を行います。
ASVが有効な例が見つかるともうけものです。

3)カテコラミンの影響を評価

ここでは、β遮断薬が導入できるかどうかを見極めます。
β遮断薬が導入できず、強心薬から離脱が困難なケース/叶わない場合は予後が不良です。
対象かどうかの問題はありますが、VADや移植を検討することも考えなければなりません。

β遮断薬を使用しながら急性期治療ができるかどうかも重要なポイントになりますね

慢性心不全の薬物治療【絶対に知ってほしいトリプルセラピー】

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急性心不全の薬物治療【3つの主病態と慢性心不全治療との違い】

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□右心不全は打つ手が少ない?

右心不全は左心不全の治療を決めるために重要と言われいています。
それについては右心機能が左心不全の予後因子として報告が相次いでいるという理由からだそうです。

多いのは左心不全に合併する右心機能低下です。
これは左室低下による肺うっ血や肺動脈楔入圧の増大が関連しているのですが、
実際、適正なボリューム管理と強心薬の投与くらいしか手段がないとされています。

肺血管抵抗をとることで右心の後負荷をとることも選択肢ですが、
左心の前負荷が減ること自体が、先ほどの曲線を左に滑り落ちてLOSにならないかがポイントになってしまいます。

一方、右室梗塞では、昔は輸液療法が推奨されていました。
しかし、左室機能が同時に低下していると逆に悪化させてしまいます。

なので、利尿薬やASVによるボリュームを減らす治療により、左心不全が改善するという症例があるそうです。

時々いますよね、一か八かASVを導入したらうっ血が改善するような左心不全の患者さん。

これは血液による右室の張り出しと心膜の空間制限が、
左室腔の狭小化を生むので、増悪をさせてしまうらしいです。

なので、右心不全が疑われる場合は、右室のエコーによる評価から、左室への影響を評価して、
適切な利尿を図ることがポイントになってきます。

 

□まとめ

いかがでしたか?

かなりざっくり進めたため、なるべく難しい表現を外した上で、
心機能を表す曲線について説明を折り込みました。

大事なのは、

 

 

 

患者の心機能を表すゴムの性能がどのような異常があり
臨床症状が、Frank-Starlingの曲線によってどのように表されているのか、
それらをもたらす原因疾患や心筋の異常が何か

この辺りをチェックできると病態の把握、治療の方向性を判断しやすいのではないかと思います。

もちろん主治医の先生の心筋の評価の仕方を共有できることが何よりも大事です。
習字位の先生とFrank-Starlingの曲線かいてみるのもいいかもしれませんね。

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