看護師の資格だけでこのまま働いていくことに不安。
認定・専門看護師、ナースプラクティショナーでないと活躍できないのか。看護師+どんな資格を持っていると、病院で働いていく時に働きやすいのか、
はたまた手当や転職に有利なのか知りたい。 これから病院を探す学生や育休明けでキャリアに不安がある。そんな人たちのために、これからの看護の世界で求められる能力や、何か専門性を高めたい、病院で働くメリットデメリットを合わせて普通に病院で働く看護師さん向けに書いていきます。

Contents
■病院の看護師として必要とされるキャリア設計方法
これからますます病院は経営が苦しくなっていき、
看護師の人手不足は解決しないと言われています。
そんな中で、実際的に、病院で働くキャリアは限られています。
管理職になるか、病棟以外の専門部署で働くか、病棟スタッフで終わるか・・・。
そのせいか、年齢を重ねたり、家庭の事情など様々な理由で辞めていく人が多いのも事実です。
そんな中で、少しでも待遇のいい病院で、専門職としての力を認めてもらうかが大事です。
つまり、いかに病院に貢献していることを上司や他職種に見せるかが大事になります。
ついでに言うと、お金になる資格を求めている病院もありますので、
病院探しをする際に、どの資格を求めているのかを一緒に調べておくと、 仲介する転職サイトや面接などを通し、給与や所属先の交渉や相談をするにも有利に働くはずです。
待遇のいい職場は競争になるので、その時にいかに自分が優秀かの魅せ方を学びましょう。
では病院に貢献するということはどういうことかについて、少し聞いてください。
□今後求められる、病院経営から考えた看護師の役割
ここでいう病院とは、いわゆる総合病院、急性期の病院と考えてください。
おそらくそのような看護師さんの方が多いと思いますので。
これからの病院経営は高齢者の入院が増え、中々退院できないことなど、 医療費を抑えるためにかなり人件費を絞っていきます。
人件費の高い医師や看護師の人手不足は解消されないでしょう。
その中で、総合病院が経営で生き残る手段は何かというと、手術やカテーテル、内視鏡をたくさんして、早く退院させる。
そして、なるべく単価の高くなるようにするには、高度な治療、投薬を行う、救急をたくさん受ける。
そして、さらに高齢者が増えるので、侵襲性の低い治療を外来や短期入院でどんどん回します。
今までも言われていましたけど、これからはさらに、です。
ただでさえ、毎日の入退院や手術で大変なのにそれが普通になります。
そして、残業をするな、と圧力をかけられ、 入院している患者さんに関わる時間は削られ続けます。
また、最近の傾向として緩和ケアやACP(アドバンスプランニング)に力を入れるように診療報酬が動いています。
表向きは、本人の意思や家族の気持ちに寄り添った治療やケア、最期についての話し合いができること、ですが、
時間がなくなっていく病院の中でそれが丁寧にできると思いますか?
ここ最近の診療報酬改定や2020年の診療報酬改定の傾向から、 外来や在宅での緩和ケア、ACPの推進がなされています。
これまでも、もともと政府は在宅看取りを増やし、長期入院による医療費削減を狙っていました。
つまり、病院は急性期治療を行う場所で、それ以外は外来、在宅にということを目指し、その結果として、地域包括ケアシステムの完成を目指しています。
何が言いたいかというと、今後病院で求められる看護師の能力は、
病棟の患者や業務を回せる能力、
集中ケアユニット(ICU,CCUなど)や手術室、救急センターでの特殊看護業務です。
もし僕らが、患者と治療場面以外での関わりを大事し、信頼関係を構築しながら、ケアを提供していくのであれば、
急性期の病院ではますます時間的にも人員的にも難しくなっていくということなのです。
もう肌で感じてますよね?
自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって考え、 医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組を「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼びます。 引用:厚生労働省HP
□ベッドサイドに看護はなくなっていく
先ほど話した通り、今後一般の病院の看護師に求められる能力は、 「患者と業務を回して、残業せず早く帰ってくれる」です。
それって本当に看護師でしょうか。
もちろん多くの看護管理者が、病院の役割に準じた人材育成や専門・認定看護師の活用に力を入れたいと答えています。
大きい急性病院であればあるほどその傾向は大きいです。
参考:「2017年 病院看護実態調査」 結果報告
しかし、今後は高齢で、ケア度や重症度の高い患者が手術を受けに入院してくるので、 ますます仕事が忙しく、複雑になるでしょう。
2025年までのあと数回の診療報酬改定で、どんどん一般の病棟看護師が働きにくくなっていくことが予測されます。
それを超急性期だけ病院で診て、あとは地域に送る、これが地域包括ケアシステムの正体です。
だからと言って、これを今から変更していては2025年には間に合いません。
なので、早くにこれに気づき、病院に見切りをつけている人は、病院ではない場所で働き始めています。
特に患者数が増えている透析クリニックや、診療報酬の高い訪問看護、美容整形は人気です。
それでも大きい組織は仲間も多いし、そのせいで信用のない安心感で満ちています。
だからこそ、病院外の情報を自分から情報収集しないと時代に取り残されていってしまいます。
いずれ、病院のベッドサイドに看護はなくなってしまう可能性は低くないと思います。
引用:厚生労働省HP
□積んでおくとお得かもしれない看護キャリア
少し話がずれますが、病院を変えるタイミングは色々あるとは思いますが、 病院を選ぶ時にポイントになるのって病院が新しく綺麗であることは重要ですよね。
逆に言えば、それは病院側にとっても看護師を呼び込むチャンスなのです。
病院は長く経営する中で、建て替えなどのタイミングで新しいシステムや医療機器を取り入れます。
そして、病院の建て替えでは、お金になる集中ケアユニットや手術室などを大きくすることが多く、
つまり、同じタイミングで、新人や中途の採用を増やします。
先にも話しましたが、今後病院で求められるのは、集中ケアや手術室などの特殊看護業務です。
その時に集中ケアユニットや手術室の経験があると就職試験は受かりやすいのです。
もちろん建て替えの前に、そういった特殊な部署への希望が通りやすいということも言えますので、早めに経験を積みたい人にはオススメです。
□病棟看護師として病院で働くデメリット
前にも書きましたが、資格をとったからとって病院で優遇されるわけでも、 患者からの信頼を得られるわけではありません。
その資格を取るまでの過程、取ってからのビジョン、その後の成果の見せ方が重要になるので、 いかに組織に貢献できるかを示す必要があります。
認定や専門看護師として働いてる人の多くが、自分の能力を直接患者に届けるために、組織との間でさまざまな努力をしています。
そのの成果の見せ方で重要なものに診療報酬があります。
看護師は医者と違って、看護行為自体にお金が発生するものがほとんどありません。
病棟看護師であれば、病棟に所属することで、入院基本料というのが発生します。
それにより、病棟の人数を確保することは病院としても重要ですが、 病棟以外の看護師を雇うことは、人件費としてはマイナスになるということです。
外来や管理職なんかはそれにあたります。
なので、時短で働いている妊婦さんやお母さん看護師は夜勤ができないので、外来に回されることが多いですよね。
ちなみに、2018年の診療報酬改定で7:1の看護体制を崩し、10:1にするといった話もあったそうです。
そんなことになったら、経営が難しい急性期病院は看護師の採用をすることを制限していくでしょうね。
さらに、辞めた看護師の分補充をするとなると、病棟間の移動は少なくなり、 いわゆる、お局の発生率は増えます。
「こんなに忙しいんだから、これからもみんなで同じように頑張っていこうよ」 なんて言いながら、(自分が)働きやすい環境づくりと残業をしないことを第一に考えるあの人たちです。
そうすると、同じ病棟でずっと働くことになり、専門性を高められるかというとどうでしょう?
病棟で働いているだけで、誰にも負けない知識や技術が身についているという実感のある人はいますか?
つまり、病棟で働くだけでは、疾患専門性は途中で飽和し、不足していくものなんです。
これまでは、看護師をある程度同じ部署で働かせたら移動させて、いろんな病棟でいろんな患者を見ながら勉強することで、
疾患に関係のない看護を学ぶ環境がありました。
患者との距離の取り方やコミュニケーションの仕方、信頼関係の作り方、そういった経験知というものです。
それらを意図的に学んでいるのが認定や専門看護師です。
しかし、病棟での移動がなくなると、その勉強ができなくなり、働く行為自体がオートマの車のようになり、 困った事例への対応ができなくなってしまうのです。
わからないなりに考えながら患者と関わることでジェネラリストとして成長してきた看護師にとって、
これからの病院の機能分化や診療報酬改定は、病院にいることでのデメリットでしかないかもしれないのです。
■看護師として必要とされる存在になるための資格3選!
近代の医療は感染からがん診療への移行期でした。
看護師の分野でも飛び抜けて成長、認知されたのは、やはりがん看護領域と考えます。
2020年の診療報酬改定でも、がん領域の診療報酬はしっかり付いてきています。
日本人の死亡率が長年1位であるここと、疾患別では初めてがん対策基本法(2006)が制定したこともあり、
国をあげて、がん患者に対する治療やケアの研究に力を入れたので、わんさか(必要な)お金を使ってくれたので、がん医療に関しての研究・開発が進んだのです。
おかげでがんに対する啓蒙も進み、国民の認識として怖い疾患としても定着したり、喫煙率の減少にも貢献したのはそれらがあったからではないかと思います。
がん患者をモデルにしたドラマなどが身近な裏にも、そういった社会的背景もあると思います。
そんなこともあり、認定看護師、専門看護師ともに、がん関連の資格取得者は他領域をさし置きダントツで多いです。
外来などでも看護師や看護師を含む多職種チームでの活動で診療報酬を得ることができることも多くなり、病院もがんを専門にする看護師へ力を入れていきました。
しかし同時に、がん領域のスペシャリストは多く、飽和状態と言えます。
次点では、重症・集中ケア、救急領域が次くらいでしょうか。
人数は多いですが、なんとも言えないというのが正直なところです。
その理由は、ICU・CCUや救急病棟も病棟看護師の人数でお金をもらうので、どんなに忙しかろうと人数は増えません。
救急センターは外来ですから極力減らしたいし。夜勤も必須です。
今後求められる特殊業務分野ではありますが、別に給料が増える分野ではありません。
では、そんな厳しい環境の中でどこに向かって僕らは力をつけていけばいいのでしょうか。
そもそも資格を持つメリットはなんでしょうか。
ということで、今回は、認定や専門看護師以外で、今後需要がある資格についての紹介をしていきたいと思います。
□日本糖尿病療養指導士(CDEJ)
まずは、「糖尿病療養指導士」という資格です。
結論から言うと、この資格取得のメリットは診療報酬をとれる資格であるということです。
また、患者への直接看護にやりがいや楽しさを求めている人にオススメです。
一部、糖尿病療養指導士認定機構のHPを参考にしています。
・外来や転職に有利な算定が可能
前にも書きましたが、看護師が病棟外で働くことは、とても難しいです。
簡単に言えば、自身の総年収分を病棟外で出せることが期待されなければいけないからです。
僕も専門看護師の資格を取ることを決めたとき、ポジションパワーに期待していましたが、そんなに甘くはなかったです。
その辺りはおいおいお話しできればいいなと思います。
CDEJの資格は、認定や専門看護師以外で、外来で糖尿病透析予防指導管理料の施設基準になっています。
診療報酬の単価も350点と高いので、内科医師や管理栄養士と協働できるようになると外来で患者さんとゆっくり関われたり、 看護外来のようなものも可能になるかもしれません。
他にも、糖尿病合併症管理料(フットケア)と呼ばれるケアの算定も可能になりますし、インスリンや血糖測定をしている患者や家族の指導においても算定が可能です。
何より糖尿病患者は絶対にいなくならないので、食いっぱぐれがありません。
そしてこれらの算定は、大きな病院だけではなく、クリニックなどでもとれますので、 内科のクリニックで糖尿病患者多かったり、力を入れていれば重宝されるでしょう。
・受験までのハードルが低い
この資格のいいところは、最短1年で習得可能なのです。(資格取得までの流れ)
受験資格は、看護師などの医療系国家資格を持っていること以外に、
・2年以上継続して勤務し糖尿病患者の療養指導業務に従事し、通算1000時間以上患者の療養指導を行った ・糖尿病療養指導の自験例が10例以上ある
ややこしいですが、重要な部分をCDEJ機構のHPから拝借しました。
つまり何が言いたいかというと、内科系の病棟や外来に2年以上の経験があれば、ほぼクリアできる問題と思います。
婦人科や1型糖尿病の小児患者のいる病棟でも、10例以上の事例を用意できるのであれば、それでも受験は可能と思います(細かいところは管理者と相談にはなると思いますが)。
他の助産師よりも多く外来に出たい、といった野望があるのであれば味方になってくれるかもしれませんね。
さらに、資格取得までの道のりは軽い方だと思います。
認定や専門看護師の学校にいくには、少なくとも5年以上の経験が必要ですが、 看護師経験は最短で2年あればCDEJの資格取得を目指すことができ、
それらの資格と同様の診療報酬算定が可能、 つまりその領域において、同等の信頼を得られる可能性があるということなのです。
□精神科認定看護師(CEPN)
この資格は、CDEJより有名ではないかもしれません。
それもそのはず。
CDEJが19000人に対して、精神科認定看護師(CEPN)は全国で約800人と言われています。
でも僕の私見ではこれから活躍する場が増える、いわば先物買いの資格でございます。
一部、日本精神科看護協会のHPを参考にしています。
・チーム活動で楽しく信頼を得て、さらに成果も出せる
なぜCEPNがオススメ資格なのか。
言ってしまうと、もちろん診療報酬がとれるからです。
高齢者が増え、認知症やせん妄患者が増える中で、認知症ケア加算や精神科リエゾンチーム加算の点数が、毎回改定ごとに上がっていってます。
この診療報酬を算定できる施設基準として、 看護師の精神看護や老人看護の専門看護師もしくは認知症看護認定看護師が必要ですが、 CEPNがいることでも可能となっています。
今後大きく期待される役割を、専門や認定看護師と同レベルの診療報酬で算定できるのは、 CDEJ同様、期待値はかなり大きいと思います。
なにより精神科の先生は寛大で優しい。
急性期病院などの精神科医師は、基本的に認知症やせん妄患者のコンサルテーションや、精神疾患を並存する患者の入院生活がスムーズにいくような薬や環境調整に関するアドバイザーの役割を担います。
なので、基本的に他科や他職種と協働して仕事をすることが常ですので、 とても関わりやすく、何より一番近くで患者の話を聞く看護師を尊重してくれます。
もちろん、精神科や脳神経内科の医師を中心に、臨床心理士たちと病棟を回ったりすることも楽しいのですが、
なにより、認知症やせん妄といった、一番病棟看護師が困りやすい問題にコミットするので、信頼を得られやすく、やりがいもあります。
・アセスメント力、組織運営のノウハウが身につけやすい
アセスメントや問題解決プロセスを他職種と共に行うので、知識やアセスメント能力は病棟で働くより数倍のスピードで身につくのが、チーム医療のいいところですよね。
精神科や脳神経内科の医師は説明も丁寧で、病態と患者の症状を結びつける力が飛び抜けているので、本当に勉強になると思いますし、 そ
して、薬物の調整の仕方や各職種のコミュニケーション力も間近で見ることができるので、間違いなく今後の力になることでしょう。
さらに、チーム医療での加算をとる上で欠かせないのが、組織での位置付けです。
チーム医療での加算をとるためには記録の残し方、院内勉強会の開催など、組織の中で成果を出し、示すことが必須です。
事務の方々とも協力して、実際にどれだけの算定が取れるかを計算し、 病院の管理と調整しながら、どれだけの時間をチーム活動に使うか、といったことを相談していきます。
そういった、病院とチームの間で行われるやりとりを間近で見れることは、病棟にいる限りなかなか経験ができることではありませんので、
転職を考えている場合など、他院に行った時などでも、チーム活動の経歴に加え、そこでのノウハウはきっと役に立つと思いますし、
何より、他職種とのコミュニケーションの仕方が、面接や自分のことを言語化するための一番のトレーニングになると思います。
そして、それらの活動は、忙しい病棟から離れて、自分の活動時間を確保することにつながるとともに、
ある意味、安息の地を得たといっても過言ではないでしょう。
チーム活動での成果が認められれば病院での評価も上がりますし、 チームで一緒に学会での研究発表を行うなど、楽しくイベントをクリアしていくのにも、
精神科関連のチーム活動はオススメですし、需要はうなぎのぼりです。
・ほとんど誰でも資格取得できる可能性あり
CDEJと違い、受験資格は以下の2点と少ないです。
(1)看護師免許の保有
(2)看護師の資格取得後通算5年以上の看護実務に従事し、そのうち通算3年以上は精神科看護実務に従事していること。
①出願者は、臨床で実務を行っていること。
②出願者が臨床で実務を行っていない場合は、精神科看護を実践する場を1か月に 28 時間以上(週7時間程度)もち、それを証明すること。
引用:精神科認定看護師制度 ガイドブック
一番の難関は経験年数と仕事をしてきた場所になります。
CEPNの受験のためには、看護師5年以上必要であり、3年以上は精神科看護に実務していることが求められます。
一見ハードルが高そうに見えますが、いかがでしょう。
ここでいう精神科看護は、認知症やせん妄患者の看護で問題ないんです。
つまり、最近はどこの病棟に行っても、認知症やせん妄の患者さんが常にいると思いますので、 ほぼ毎日、精神科看護を実践していると言えると思います。
僕の知り合いには、整形外科から循環器内科に移動し、合わせて10年近く看護師をしていましたが、
認知症患者さんを意識的に見ていたことを上司に認められ、認知症看護の認定看護師コースに受験し、今では認定看護師として院内でのチーム活動に従事しています。
なので、もし希望があれば、高齢者の周手術期や認知症患者の看護を意識的に看たり、 認知症などの研修に参加し、上司にアピールしたり、今後の目標の共有をするなどすれば、病棟に関係なく受験は可能であると思います。
病棟、病院の認知症やせん妄患者さんへのケアの充実を測りたい人、抑制などを減らしたい野望を持ってる人などにはオススメです。
□心臓リハビリテーション指導士
3つ目に最近話題の心リハです。 大きな病院ではすでに理学療法士が中心になって算定を取っているところが多いかもしれませんね。
・時代は心血管疾患へ、経験を積む重要性
前にも書きましたが、日本のがん医療がここまで進んだこと、国民のがんへの関心が高いのは、がん対策基本法という法案が通ったことが大きな理由になっています。
それが実は、2018年末に、「脳卒中・循環器病対策基本法」というのが成立しました。
これにより、今後がん以上に脳・心血管疾患への対策・研究のための費用が出るようになることが期待されます。
心血管疾患と脳血管疾患は、何年にも渡って日本人の死因の2位3位であり、今後も増え続けると考えられています。
現在では、心筋梗塞や脳卒中患者の生存率が上がった代わりに、 その患者らが高齢化したことで、入退院を繰り返すようになっています。
さらに、がん患者が、がんを克服した十数年後に治療による心毒性によって心不全で入院するということが増えているのです。 皮肉なことです。
もちろん、糖尿病や腎臓病などの生活習慣病患者も後を絶たず、動脈硬化によって血管疾患は増えるばかり。
心不全の統計では、毎年1万人ずつ新規の心不全患者が出ると言われており、 循環器病棟だけでは心不全を支えられない時代がやってきます。
いまでこそ、忙しい病棟業務の中、ケア度も高いだけではなく、急変しやすい患者で病棟があふれていることを想像してください。
転職活動などでも循環器疾患患者の看護に携わったことがあるだけでも評価は高くなっていくでしょう。
・循環器医療のスペシャリストへの道
心臓や血管の病気を持つ患者に対し、運動療法と学習活動・生活指導・カウンセリングなどの総合的プログラムによる再発や再入院を防止することをめざす医療をさす。
まず知って欲しいのは、循環器看護に特化した資格は心不全看護認定看護師か、慢性疾患看護専門看護師以外には、今のところ心リハ指導士以外は存在しません。
総合的に見て、循環器系の資格では、心リハ指導士は今後の需要や総合的な知識、技術のバランスからみて一番でしょう。
心リハは運動や負荷試験なんかと同じ意味(狭義)で認識されていますが、 実際は心疾患などの再発や増悪の予防を多職種で取り組むシステムそのものをさす言葉です。
その中では、薬剤師が服薬アドヒアランスを高める関わりをしたり、管理栄養士が塩分制限をするコツを家族に指導したりする。
そんなの普通じゃないかと思いますよね。
だから理学療法士の運動療法が話題の中心になるのです。
しかし、実際はそれら各職種が自由に患者指導を繰り返しては効果的な成果はでないことがわかっており、 医師や看護師が多職種の中心になり、多職種での話し合いや協働を促進し、支援の方向性を見出すところに多職種アプローチ、心リハの面白さや効果が発揮されます。
病棟看護師は、患者が退院後も生活に合わせた疾患管理ができるように、患者とともに退院後の目標を定めるといった個別の支援はもちろん、
他の病棟看護師に対し、支援の方向性や具体的な関わり方などの周知をすることが重要です。 つまり、心リハチームと病棟を結ぶ役割として、心リハに精通した看護師の役割が不可欠なんですよね。
さらに、心リハチームとの交流は、各職種の専門的な思考や知識に触れることができるので、看護師の知識アップに直結します。
病棟でいち早く患者の困りごとや支援の必要性に気付けたり、中心になって患者教育を行うことができるようになると考えます。
・受験、試験共に難易度は高いけど見返りも大きい?
実はこの心リハ指導士の資格試験、看護師の合格率は50〜60%程度と言われているほど超難関と言われています。
もちろん勉強すれば受かりますが、心リハ運営に必須の心肺運動負荷試験、運動処方について、看護師の点数が伸びない理由になっているそうです。
他にも、レントゲンや心電図、心エコーといった検査や病態に関する項目も一部あり、医師はもちろんのこと、次いで理学療法士の合格率が高いとされています。
また、受験のためには、受験の申し込み前2年間の学会への所属が必要です。
さらに、心リハを行なっていない病院では、学会の認める病院への5日間の研修に参加することが義務付けられており、 ここ数年で、競争率も上がっているので、学会だけでも早めに所属しておくなどできることはあらかじめやっておくことが望ましいでしょう。
そういった、学会費などの資金面や受験資格、試験のレベルが後になって身を結ぶかどうかは、先に話した、事前の情報収集と循環器医師をいかに巻き込むか、巻き込まれるかが重要です。
これから心リハをやると言った時に、いち早く手上げができる、もしくはやる時に声をかけてもらえるようにコンタクトを取っておく。 そういった根回しなどが、のちのちの自分の活動や利益につながることが僕自身の経験でわかりました。
逆に言えば、心リハ算定を開始する前に、学会に所属して準備が整っていれば、学会費や受験料などを病院が負担してくれるかもしれません。
交渉材料は多い方がいいのです。
ちなみに僕も心リハ指導士を取得後は、コアメンバーとして認めてもらったため、 毎年の学会費、出張費、登録費などは病院が負担してくれています。
医師が中心の活動なので看護部も静かです。 これも診療報酬算定に関わっているからということの証明になりますでしょうか。
そして、2021年度以降、心リハの算定において心リハ指導士を取得した常勤看護師と常勤PTが2人以上が必要になることが示されました。
つまり、現在心リハ指導士が1人以下で算定をとっている病院は弾かれて行きますので、
病院の中で役割を獲得していくためのチャンスかもしれませんね
・心不全療養指導士は取得すべきか
2020年より循環器学会で認定が開始される予定の、心不全療養指導士が最近話題です。
超高 齢社会を迎え心不全患者が急増している現状をふまえ、心不全の発症・重症化の予防のための療養指導に従事する医療専門職に必要な基本的知識および技能など資質の向上を図るために創設
心不全の抑制や改善が図られ、わが国における質の高い心不全医療の推進、さらには国民全体の医療・福祉の向上に貢献していただくことが期待
引用:循環器学会HP
心不全患者に対するケアや教育の質が高まることに異論はありませんが、僕自身はこの制度自体には疑問があります。
これから増えると言われている心不全患者の教育などのため、各専門職がさらなる療養指導に関するスペシャリティを高めるために作られたものです。
そして、心リハ指導士と違い、受験のハードルは学会に所属していることと事例提出だけなので、心リハほど難しくはありません。
開始直後の資格試験は難易度も低いはずなので普段から興味をもって勉強している人であれば、特別な勉強もいらないでしょう。
僕が気になるのは、この資格を医師以外のコメディカルが取得するようになっていることです。
心リハ指導士は、医師も受験が必要な資格ですが、心不全療養指導士は医師は取得できないのです。
チーム医療の向上が重要であると言っているのにも関わらず、医師が他職種の専門性や必要な技術について学ばなくていいというのは、僕は学会側の傲慢だと感じました。
もちろん心不全の病態などに関してはもちろん医師の知識には敵わないでしょう。
しかし、日常生活管理を伝える関わりの中で行われる、各専門職のさまざまな知識や技術は、医師も身につけるべきです。
それをわかった上でカンファレンスなどで情報共有をしたときに、患者への支援をみんなで共有できるのだと思います。
そして、心不全療養指導士は2020年現在、特に診療報酬がつく予定はありません。
つまり、取得しても病院にとってメリットはありません。
2022年の改定で、外来での心不全患者への関わりに算定がつきそうであれば取得価値が少しでるかもしれませんが、僕はそれまで学会の会員費を払ってまで待って取得すべき資格ではないと思います。
学会から心不全療養指導士のための参考書が2020年3月に発売されています。
内容自体はとても充実しており、看護師の執筆者が多いのが特徴です。
これから循環器病棟にこられる新人さんや異動の看護師さんにはとてもわかりやすい内容になっていると思います。
心不全に関わるコメディカルに学んで欲しい内容は、やはり看護師が握っていると言うことなのでしょうね。
ぜひ医師に学んで欲しいですが。
■病院で必要とされる人材になるためには
いかがでしたでしょうか。 かなりボリューミーな内容であるわりに、看護やその資格について語りきれていない感が強いです。
看護師は専門家であるのにも関わらず、看護師だけで診療報酬を算定できるものが少ないのです。
その中で、資格のメリットを診療報酬がとれることやネームバリューがあることをメリットとして語りましたが、
一定時間の研修を受けることで、診療報酬がとれるようになるフットケアなどもあります。
さらに、資格がなくても上司や看護部とうまく将来のビジョンを共有し、売り込みに行くことで病棟ではない場所の仕事を任せてみようかな、と思わせることも実際は可能だと思いますし、
資格があってもそれができないこともあるでしょう。
ただそういったことが苦手な方が、今後うまく時代の波に乗れるような知識になったら嬉しいなと思います。
そんな中で、うまく資格を活かしたり、病院の管理の方々とうまくコミュニケーションをして行く上で大事なことを最後に書いて終わりたいと思います。
それは、病院や看護部の掲げる理念を知っているかどうか、です。
自身の働く病院のホームページを見たとき、理念や基本方針を読んだことがありますか?
もしかしたら就職試験の前に確認くらいはしたかもしれませんね。
病院は基本的にこの理念に沿って、ルールや年間の計画を立てています。
なので、この理念に全く当てはまらない職員ではまずいわけです。
といっても、理念自体は抽象的なものも多いので、その理念のもとで掲げている、 病院機能や年間目標を逐一確認し、自分が病院に必要な人材であり、
患者とその家族にこれだけのものを提供できる、またはできるようになりたいということをしっかりアピールし続けることが重要です。
もちろん、転職する際に、他の人と差をつけるには、 いかに病院に貢献する気があるか、この病院で何がしたいか(したいかどうかは置いておいて)、
その具体的な過程をイメージし言語化できることがもっとも重要です。
経歴不問って書いてあるクリニックなんかは看護師としての能力は求めてないのですから。
それでもお給料がいいのは看護師という資格への信頼なんでしょう。
しかし、いずれクリニックへの就職も、退職する方がいなれば難しくなるので、急いだ方がいいとも言えます。
そして、病院という大きな組織で成り上がって行くためには、直属の師長さん以外の管理職に顔を売らなければいけないし、
名前を覚えてもらうためには、院内の研修などへの積極的な参加も重要でしょう。
自分が今後どのように働いていきたいか、どのように貢献できるかをしっかり提示できるかが、病院の中で自分の居場所を作って行く上で重要になっていくでしょう。
以上、最後まで読んで下さりありがとうございました。
専門学校卒で10年目に専門看護師になりました。
普段は、専門看護師として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。