・看護は好きだけど、急性期の忙しさについていくのが辛い
・給料が減っても、残業を減らしたい
・元気に帰っていく患者をみたいまさに、僕が就職前に悩んでいたことでもありますが、書いていきたいと思います。

筆者は3年数ヶ月のリハビリ病院での経験を有し、その後急性期病院で働き続けています。
これまで10数年、整形疾患他、心不全、免疫疾患などの内部障害患者のリハビリに携わってきました。
Contents
■リハ病院の看護の特徴とは
□回復期リハビリとは
リハビリとは、病気やけがを発症し、治療を受けた後、または受けながらも、その後の生活、社会への復帰を見越した訓練の総称のことを言います。
「リハビリテーション」は、ラテン語で「re(再び) – habiris(適した)」という語源から成り、発症以前と変わらない水準の生活をめざすことをさします。
例えば足を骨折したとしても、手術をすれば歩けるようになったり、元どおりの生活に戻れるわけではありませんよね。
ADLを意識した歩行訓練や松葉杖を使用した状態での社会復帰の検討、後遺症リスクを緩和するなど、さまざまな目的のために行われるのがリハビリテーションというものです。
そのために、疾患治療の中心である医師や看護師、機能訓練を担当するセラピスト(理学療法士や作業療法士など)とともに、本人だけではなく、家族をも巻き込み、患者の目指すゴールに向けてリハビリの計画、実践を行なっていきます。
リハビリは、治療がメインの急性期から、生活メインの維持期の間である、回復期と呼ばれる時期がもっとも効果的にリハビリ効果が得られる時期と呼ばれています。
そのため集中的にリハビリを行うことで安定した日常生活が送れるように支援することが求められます。
回復期に行うリハビリの質が、回復の度合い、その後の生活や人生に大きく影響するので、患者の納得した形で協力が得られるように、 さらに安心して相談し合えたり、叱咤激励をできるような関係性などが、医療者には求められると考えています。
□病院機能における回復期リハ
リハ病院での看護を語るためには、まず日本におけるリハ病院について理解してもらうことが大事かもしれません。
日本の医療制度において、いわゆるリハビリというものは、 “急性期病院”、“回復期リハビリテーション病棟”、“クリニック”の3施設で受けることが可能とされています。
働いたことがある施設、または怪我をして通院した経験のある方であればイメージがつくのではないかと思います。
病気や障害の発症期、治療や手術が必要で入院した場合は、いわゆる“急性期”としてリハビリを開始し、 初期の病気や身体状況などの評価をするなどリハビリを開始していくのが急性期病院です。
入院が必要なく、通院でのリハビリを行う、または退院後に外来でリハビリを継続する場合などでは、急性期病院、または地域のかかりつけのクリニックなどで継続してリハビリを受ける場合などもあります。
そして、“回復期リハビリテーション”とは、 入院治療のめどが立つころより、身体状況などの回復の見立て、 さらに、自宅環境や家族の支援状況、患者の目指すゴールなどを検討し、 リハビリの継続が必要な場合において、専門の病棟に転棟、または転院をしてリハビリを継続することを言います。
急性期治療を行う病棟と回復期リハビリテーション病棟をもつ病院もあるようですが、ほとんどの場合は別になっているので、転院することが多いでしょうか。
今回お話しするのは、この回復リハビリテーション病棟のある病院が中心になります。
□回復期リハビリにおける看護
回復期リハビリ病棟の特徴は、 リハビリを長時間行うことを認められているので、セラピストによるリハビリを行うことを入院生活の中心にして計画を立てることが重要になります。
もちろん体調に合わせて時間数を減らすことはもちろんのこと、
リハビリによって回復した機能や回復途中の機能を、通常の生活で使用することも重要なので、 入院生活を支える看護師の役割は大きいとされています。
急性期病院で治療がほとんど終わってからくることが多いので、 リハビリが必要になった原因疾患や基礎疾患、年齢などによって生活管理は必要ですが、
治療やそのための医学的管理が少ないのが患者の特徴でもあります。
そのため、急変対応、服薬など薬剤の調整や手術などの治療は少なく、 僕は3年と数ヶ月の経験の中で、患者さんの死に立ち会うこともなく過ごしました。
それがいいかどうかは別の話ですが、
つまり、回復させて返すことを前提にした病院であるということです。
そして、言わずとも知れたことですが、整形や脳神経系の疾患患者が多いこと、
さらに高齢者が増えてきていることから、外科手術後や内科疾患の治療終了後の廃用症候群が原因で回復期リハビリ病棟に行く患者も多いです。
しかし、認知症や精神疾患などによって、回復期リハビリのリハビリ成果が明らかに発揮できない場合においては、 専門の病院などに行く場合もあり、
特徴として明らかにリハビリ適応ではないだろう、という患者は急性期病院より少ないことも特徴です。
■リハ病院で働くメリットとデメリット
一概には、すべてのリハビリ病院、病棟に共通するわけではありません。
その中でも、一般の急性期病院で働く看護師さんが多いことを鑑み、 病院機能や患者の違いから考えられるメリット、デメリットについて書きたいと思います。
□メリット
・時間に追われない(緊急、残業)
先にもお話ししたように、リハビリ病院は認知症の重症など、リハビリの進行に著しく影響を与える影響の患者さんは入院しづらい現状があります。
そのため、急性期病院にありがちな緊急入院や緊急手術などはほとんどなく、 なくなる患者さんも0ではありませんが、急変リスクのある患者も少ないです。
そのため、毎日の業務ルーティーンが決まってくるので、 忙しいことはあっても、ある程度予想の範囲で仕事が進められます。
いわゆる記録や受け持ち患者の計画変更や指導などで、 時間外になってしまうことはあっても、残業も予測を超えて多くなることもないと考えます。
僕が以前働いていた病院では、3交代の勤務だったので、深夜勤前の日勤などは、 目処が立てば、2時間ほど有給を使用し早く帰らせてもらうなどの配慮してもらったり、
年末年始や連休などでは、休みが増えるといったうれしいイレギュラーもありました。
これも、予定外の業務が増えることの少ないリハビリ病院ならではの特徴だったとも思います。
・ゆっくり看護を学べる
これから話す2つの特徴も、時間がある、という点によってもたらされるメリットと思います。
僕はもともと看護に関心が低く、セラピスト(PT、OT)の行うリハビリに興味がありました。
実際に看護師として働いていると、 患者さんとの関わりの中で、 勉強したことが患者さんの生活に影響していく点で面白さを感じるようになりました。
生活に影響していく点、と言いました。
少しずれますが、これについて話を深めていきます。 これは患者に看護師の言うことを聞かせると言うことではありません。
リハビリ病棟の特徴として、患者の障害などの強さによって行われる看護介入には違いがあったとしても、 ある程度目標が定められるようになると、 毎日の日常生活援助がルーティーン化していきます(いい意味でも悪い意味でも)。
そのため、その繰り返される看護ケアやリハビリ介入の必要性や影響をじっくり見ることができるので、 自分で勉強した障害や病態が、患者の行動や症状という形で目の当たりにすることで理解がしやすいのです。
例えば、脊髄損傷の患者さんは、 患者に現れている膀胱直腸障害や自律神経の失調症状などの症状が、 脊髄の障害が首なのか胸なのか、完全なのか不全なのか、といった障害の様々なレベルで個人差が出ます。
首に近ければ血圧の維持に重要な下肢や体幹の筋肉が少ないために、起立性低血圧を起こしやすく、車椅子に乗って1分後には意識消失なんてことがあります。
また、頸髄損傷の患者は障害部位(C5〜8)によって、肩から指にかけて細かく障害が変わるので、どの筋肉が動くのかなどが複雑ですが、 食事などの日々の生活を見ていると患者さんに可能なことが見えてきます。
このように、日々観察したことで、患者にどのようなセルフケアが達成可能で、どこを目指すべきゴールにするのかというのを予測できるようになるので、 毎日の仕事を通して、勉強したこととが一致していく感覚がつかめます。
さらに、病気の成り立ちや検査などから、医師と連携をとりながら患者に起きている現象(障害や苦痛を伴う症状)がわかってくると、
自宅の生活への不安や患者の持つ苦痛といった、看護師ならではの生活に根ざした観察視点で患者と関わることができるようになります。
これらは、患者の病態や症状の変化がめまぐるしい急性期では介入しづらいとことではないかと個人的には考えています。
なぜか。
特に看護師は医師と違い、病態を理解すれば患者教育ができるというわけではなく、 その病態や治療が、どのように生活に影響するのか、という理解が求められるのです。
これ、特殊業務である集中ケアや手術室、救急とかだとわかりにくいと思うんです。
一般病棟ですら難しいですからね。
これを診療看護師(NP)などの看護師に、一般の看護師と医師との間でやってもらいたいというのが僕の思い。
そういったことを働きながら理解を深めたり、患者教育などを行なっていく過程をじっくり学ぶのはリハビリ病棟ではやりやすいのではないかと考えています。
・患者とゆっくり関われる
患者とゆっくり関われると言えばいいのか、関わらなきゃいけないと書くべきかは難しいところです。
急性期と違い、長くなりそうであれば転院という選択肢は回復期リハビリ病棟にはありません(例外はあります)。
大きく違うのは、疾患によりタイムリミットが数ヶ月単位と設けられていることです。
その時間をフル活用して患者や家族と一緒に考えたゴールに向かって、リハビリの実施、評価、修正、実施、評価・・・、の繰り返しです。
できることが増えれば患者自身がやる気になったり、目標が高まることもあるでしょうし、 障害の受け入れができずにリハビリ病院に来れば、それどころじゃない場合もあります。
そういった病態と生活を結びつける、ために必要な外部要素である、心理面のアセスメントや家族支援なども必要不可欠なのがリハビリ病棟の特化したところかもしれません。
先ほどの脊損の患者を例にすれば、頸損の患者さんであれば膀胱直腸障害によって排泄は徒手的になりますので、膀胱留置カテーテルの管理や排便の処理(多くは摘便手技の取得が求められます)も家族がやらなければならないこともあります。
サービスもただではないので、金銭面との折り合いもつけなければなりませんし、 MSWとの連携や、将来への不安については心理士さんに入っていただくことも必要でしょう。
しかし、そういったアセスメントをするための情報を感じとったり、聞き取ったりするのはやはり看護師であり、 順調だろうと問題を抱えていようとも、密に関わり、信頼関係を構築し、最後は笑顔でお別れができる、これがリハビリ病棟の楽しいところでもあり、やりがいのある部分かなと思っています。
□デメリット
・診療行為に携わる機会が少ない
ここは想像通りかもしれませんが、 回復期リハビリ病棟の特徴として、治療が終了した患者が移動してくるケースがほとんどですので、急性期で行う必要があり、なおかつリハビリの侵攻の妨げになる行為がある場合、移動ができないことが多いのです。
もちろん、一般病棟で行うような医療処置などを行うことは普通にあります。
手術を行なっているリハビリの病院もありますのでICUを完備するところも少なくありません。
しかし、透析施設を持たない、人工呼吸器が少ないといったこともあり、 超急性期の患者を物理的に見れないこともあるので、病院を選ぶ際の注意点にしてもいいかもしれません。
また、循環器、消化器外科、緩和ケアなどの専門の患者さんがみたい方もおられると思います。
そういった患者さんがいないわけではないのですが、専門病棟や病院ではないことが多いので、 疾患などを専門的にみたいといった強い思いのある人には確かに不向きかもしれません。
・給料が安いかもしれない
夜勤手当などは通常通りあるかと思いますが、 病院として急性期ほど算定できる診療行為がないので、バンバンお金が入ってくるようなリハビリ病院はあまりないのです。
回復期リハビリは、ある疾患のリハビリ目的の入院、1日につき、何点といった形で診療報酬が決まっているので、 急性期病院と違って、加算を上乗せして点数を高くすることが難しいのです。
つまり、なるべく早く目標をクリアできるようにリハビリをする方が、利益につながりやすいのですね。
なので、先にも話したように重度の認知症やリハビリができないほど状態が悪い患者は受けても患者に合わせたリハビリを行うことができないので受けられないのはそれが理由です。
なので、病院の利益として入ってくる報酬は基本的に決まっているし、残業なども少ないので、 よっぽど人が少ないために、毎日のように夜勤があるようなブラックな職場でなければ、急性期病院より基本給がやや低いかもしれません。
ただ、これに関しては地域差が大きいので、就職を希望する地域での相場は病院説明会などで確認できるといいかもしれませんね。
・郊外に多い
最近はそんなこともなく、数年前から機能分化が進められ、 回復期リハビリ病棟が進められるようになり、大きめの病院がリハビリ病棟をもつことも増えてきました。
ただ昔からのリハビリ病院は、温泉地などにも多いのは事実で、 私が以前勤めたリハビリ病院も山奥の温泉地でした。
リハビリに温泉が影響があるのかは不明ですが、 未だ首都圏でもそういった施設は少なくないので、住みやすい都会で働くことを希望されるのであれば、急性期病院を探すよりちょっと大変かもしれません。
ぜひいい病院があったらぼくが教えて欲しいくらいです。
■まとめ
回復期リハビリテーション病棟まとめ、いかがだったでしょうか。
僕自身、今後も一看護師としてリハビリに関わっていくにあたり、リハビリ病院での経験は本当にかけがえのないものであり続けると思います。
もちろんCNSとしてもベースとなる看護のベースはリハビリ看護だと自負しています。
今後さらに、急性期治療が済んだ患者さんの放出が止まらない急性期病院にとって、回復期リハビリのできる病院は貴重ですし、重宝されるのは間違いないです。
その証拠に、2020年の診療報酬改定でもがんリハなど、リハビリを推進する動きがありますし、
前にも書いた腎臓リハビリテーションについても、2年後の算定開始が期待されています。
そのため、場所はどこであってもリハビリの視点を持って看護に当たることは少なからず重要なことですし、
多職種の視点を持つことも、患者を包括的にアセスメントすることも、高度な看護を提供していく上では欠かせないものです。
ぜひこれを期にリハビリ看護について学び、普段働く施設などで活かせるようにしてみてはいかがでしょうか。
専門学校卒で10年目に専門看護師になりました。 普段は、専門看護師として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。