Situation of Nursing 1【リハビリが進まなくなった脳梗塞患者さん】

Situation of Nursing シリーズ1

脳梗塞後に片麻痺となったAさん。
もともと料理上手で、夫や息子の弁当を毎日作っていました。
食べることも大好きで、肥満に加え、高血圧や脂質異常症を指摘され通院はしていましたし、主治医に勧められ運動を始めていたようです。 

神経学的な評価により、右から左への利き腕交換が必要と考えられました。
ある日Aさんが、
「いくらやっても左手が上手に使えない。こんなに苦しんで訓練をするなら、せめて右手のリハビリをやりたい」、と訴えたのです。

さて、あなたはどんな風にアセスメントし関わろうと考えますか?

けいた
この記事を書いているのは、看護師歴10年ちょっとの者です。
普段は、専門看護師、心臓リハビリテーション指導士として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。

 

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□在宅を目指す中での患者の苦痛とは?

 

多くの患者が「退院後は自宅に帰って生活をする」、ということが当たり前と考えているかもしれません。

しかし、実際は

「一人でトイレに行けないと困る」、

「利き腕で生活がしたい」、

などといって入院を長引かせたり、リハビリの進行を遅らせたりすることって、ありますよね。

つまり、患者や家族がどのような状態で家に帰りたい、または帰ってきてほしいのかについては、

少なからず、医療者と患者のゴールのイメージがずれていることがあります。

そして、そのゴールのイメージが、とても高いことが往々にしてあるということに、ご納得いただける方も多いのではないでしょうか。

 

例えばですが、脳梗塞後に片麻痺となったAさんの話をします。

Aさんはもともと料理上手で、夫や息子の弁当を毎日作っていました。

食べることも大好きで、肥満に加え、高血圧や脂質異常症を指摘され通院はしていましたし、主治医に勧められ運動を始めていたようです。

 

本格的にリハビリが開始となったAさんは、

神経学的な評価により、右から左への利き腕交換が必要と考えられました。

ゆっくりではありますが、順調にリハビリも進んでいました。

しかし、ある日Aさんが、

「いくらやっても左手が上手に使えない。こんなに苦しんで訓練をするなら、せめて右手のリハビリをやりたい」、と訴えたのです。

さて、なぜこんなことが起きたのでしょう。

 

□医療者の評価と患者の体験

 

リハビリに限らず、治療や看護は、

医療者と患者との間で、十分な説明とそれに対する納得のもとで提供されます。

今回の例でも、リハビリの目標については、医師やPTからの説明もあったはずです。

実際にリハビリを進めることができてきたのには、Aさん自身も納得されて取り組んでいる部分があったからだと思います。

それでも、Aさんにしてみれば、

「まだ右手で生活が可能なのではないか」という思いがぬぐい切れなかったのかもしれません。

実際、相手は医療者ではないので、言葉で説明をされただけでは中々すっきり納得のいく人のほうが少ないと思います。

さまざまな病気にいえることですが、多くの場合、体で感じた症状や生活体験を通して、身体に起きていること、

今回で言えば、脳梗塞による右手の麻痺や、それによる生活のし辛さ、などを実感し、受け入れていきます。

特に、事故や急性疾患で、急に体の機能を失ってしまう病気では、

医学的な説明だけでは到底納得なんてできることではありません。

障害の受容をしていくためには、それら体に起きたことを裏付ける、患者本人が認識した体験が、重要と考えられているのです。

 

もちろん患者に、患者の体に起こっていること、それによりどんな生活が強いられるか、という医学的な予測を伝えることは医療者の仕事です。

ただ、その伝え方やどのように理解したか、それによりどのような反応や行動が取られるようになったか、ということも十分に振り返り、日々の関わりやリハビリに繋げていくことが重要なんですよね。

 

いずれ、具体的な伝えるための方法についてはお話ししていきたいと思いますが、

まずは障害を受容していく患者の反応についてもう少し深掘りします。

 

□患者の考える障害とその体験を聞く

 

「障害の受容とは、あきらめでも居直りでもなく、障害に対する価値観の転換であり、障害をもつころが自己の全体としての人間的価値を低下させるものではないことの認識と体得を通じて、恥の意識や劣等感を克服し、積極的な生活態度に転ずることである」(上田敏)

と定義されています。

 

上田氏は苦しみながらも、時間をかけ、うまく付き合っていこうと覚悟し「新しい人間に生まれ変わった」という自覚を持つものであると説いています。

 

Aさんの話に戻りますが、

Aさんは左手の訓練は辛いから、右手のリハビリをやりたい、と言いました。

この時点でAさんは障害とうまく付き合っていくという決意があったかはわかりません。

しかし、真面目に取り組んでいたリハビリに弱音を吐いたのは、

もしかしたら、これまでの生活に戻るため、つまり家族に毎日お弁当をつくるといった生活を想像することが難しくなったのかもしれません。

 

では僕ら看護師が、Aさんにできることはなんでしょう。

 

大きな障害を抱え、今後の展望が見えなければ見えないほど、

希望だけを抱かせることも、事実を伝えることも、必ずしもいい効果があるとは限りません。

なので、患者がどんな風に病気を受け止め、障害による影響を認識しているのか、

その上で、障害を抱えた状態でもどのような生活を送りたいのか、

Aさんで言えば、家族との関係や得意な料理について話を広げることも重要なことでしょう。

 

それにより、実際どこまで生活活動を想定してリハビリに取り組んでおられたのか、

そのような患者の前向きな気持ちについて聞いていく、といった関わりは大事だと思います。

実際には、患者自身が、元の生活に戻れると漠然と考えていて、

リハビリを進める中で、このままじゃ元の生活に戻るなんて到底無理だ、と気づいていく場合もあります。

先にも話した通り、患者は体験を通して気づいていくからですね。

 

患者さんは、辛い、または焦る気持ちの中で、

先の見えないリハビリに嫌気がさしたり、「右手の訓練への切り替え」という自分なりに考えた解決法を編み出そうと必死になっているかもしれませんよね。

 

□看護師として信頼を得る関わり

 

なので、もし僕が関わるとすれば、

右手に切り替えてリハビリを進めたいと思った理由について聞いていきます。

それにより、Aさんが右手の訓練が有効ではないと知っていたとしても、

そうじゃなかったとしても、

右手の訓練を頑張りたいと思った気持ちは肯定し、応援したい気持ちを伝えます。

 

この関わりは、僕が看護師として患者と関わる上ではとても重要にしています。

信頼を得るというか、まず、人として対等になるとでもいいますか。

それにより、患者が相談しやすい、この人の言うことは信頼していい、と思ってもらえる人間になるための関わりをします。

 

つい医療者は、専門家としてマウントをとって納得をさせようとしてしまいますが、

それが効果的な場面はあったとしても、それほど多くはありません。

 

そして、病院という閉ざされた空間で、看護師やセラピストが患者の本心を聞けないと、Aさんの苦痛に気づいてあげられる人は誰もいないかもしれません。

妻や母といった役割を演じられなくなることについて、Aさんが家族に相談することも難しいでしょうしね。

 

□看護師としてどう動くか

 

それでは、長くなりましたので、関わりという点でまとめに入ります。

・まずは右手に切り替えようと思った理由を聞く

・訓練を頑張りたいと思っている前向きな気持ちを受け止める

 

そして、次のステップとして

・左手での訓練が有効だと考えている、医療者の判断を誰がどのように伝えるかを判断する

・Aさんがリハの有効性を知っていて選択した反応であれば、右手も左手も訓練してもらう

それにより、どちらが生活により有効か、そういった判断をAさん自身によって、結論を出せることを、僕ら医療者は見守るということも重要と考えます。

 

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いかがでしたか?

今後はこのような形で、

本や文献なんかから持ってきた症例なんかをアレンジして、

慢性やリハの視点で看護展開を考えていけるようなコンテンツを考えていきたいと考えています。

次回は、患者にベッドメッセージをどのように伝えていくか、というテーマを考えています。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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