糖尿病患者とCOPD患者の自己管理を促す時のポイントの違いってわかりますか?
CKD初期と心不全なんかもこれに近いかもしれません。
脳梗塞で障害が残ったりすると両方の視点が大事だったりします。
違いは、身体症状が生活に影響するかどうかと言う点です。
糖尿病やCKDだって身体症状が出るかもしれませんが、
入院するほど生活背景が悪い場合は、COPDや心不全では命に関わっているかもしれませんね。
では、なぜ身体症状がポイントなのか。
これについてセルフケア理論というのをベースに少しお話をさせてください。
身体症状があるかどうかはもちろん大事ですが、
重要なのは、病気をもつ体とどのように生きてきたか、と言う点です
今回のシチュエーションは、
心不全のAさんは再入院を繰り返すベテラン入院のルールを守れず看護師や主治医を困らせることもしばしば数年前の術後の腓骨神経麻痺で右下肢の動きが悪くなってから仕事を辞めパート+生活保護に水分や塩分管理が課題だが、どのように自己管理を促すのがいいでしょうか?
今回の記事では、次の記事でお伝えするもう1つの視点と合わせて、
大きく2つのポイントを取り上げます。
その中で今回は、
・患者に療養行動をとってもらうための関係の作り方
患者指導で成果を出すのは並大抵のことではありません。
だって相手だって意思を持っているのですから。
その中で、セルフケアの概念は患者という人間を見る上で1番の基本だと思います。
これだけ押さえれば、もしかしたら患者という人の見方が変わるかもしれませんので、
ぜひ一緒に学んでいきましょう。
では、参ります。

Contents
□疾患の特徴は患者の体験している症状で捉えろ
まず疾患は多岐にわたる上に、
その疾患によって生じる症状は、主観的にも客観的にも多少異なります。
つまり、”症状”によって影響が出ている患者の生活に焦点を当てることが重要です。
生活がままならないからこそ入院している、そのことを患者と共有できると、
入院しないため、苦痛を感じないための療養行動をとるに至るのが人として普通の出来事です。
僕らも風邪を引いたとしても、
多少辛かろうが、仕事に休まずにいってしまうことってありますよね。
つまり、良くないとわかっていても、人は普段の生活を維持し続けようとするのが普通であり、
それでもどうしようもないから、なんとかしてもらうために病院にくる、または運ばれてくるのです。
特に、症状が生活に影響しない糖尿病や腎臓病、高血圧症などの病態は外来診療がメインであり、
患者が気づきにくい生活への影響や、今後どんな風に悪化していくかという予測についても、
ゆっくり話す時間もないことがほとんどです。
しかも、そういった症状がない病態を抱えている患者は、
通院や内服といった行為自体が、病気よりも社会生活に影響を与えてしまっていることも少なくありません。
このような人に、「病院に来るのが当たり前」「なんでちゃんと薬を飲まなんですか」と当たり前のように圧力をかけてしまうと医療者への不信感が募り、やがて病院に来なくなります。
当たり前の話です。
だって病気よりも医療者とのやりとりが苦痛なんですもの。
なので、患者が体験している症状、治療による生活への影響から患者の苦痛に寄り添い、
医療者の介入すべき点を見つけていくことが何よりも大事なのです。
□患者の体験している生活と病気の関係
ここでは心不全の患者さんを例にしていきたいと思います。
先の話の通り、まずは患者の体験している症状やそれによる苦痛、
それに加えて、実際の病態をアセスメントします。
一般的に、心不全の患者さんであれば、
安定期は無症状で、徐々に体液が貯留していくることで、浮腫や体重増加から始まり、
活動時の疲労感や倦怠感、息切れが強くなって行きます。
体液貯留症状がで始めて大体1週間後に、
夜間の呼吸困難感や活動時の急激な呼吸困難が起こり病院に駆け込むパターンがあります。
もちろん様々な病態がありますので、
主治医と患者の受診行動のための目安となる症状や徴候などは共有しておく必要があります。
今回のシチュエーションの患者では、塩分と水分のコントロールが課題ですので、
徐々に体液貯留が進行する慢性心不全がベースになっています。
先に書いた通り、症状が出やすい病態の場合、
①患者なりに病院に行った方がいいと認識している症状と、
②その症状が出るまで病院に行きたくない、または行かなくてもいいと考えている認識や理解があります。
大体心不全患者には、「体重が2kg増えたら病院に相談してください」指導することが多いですが、
本当に2kgでいいかは医師と相談してください。
体液が貯留せずとも呼吸困難が起こる肺水腫という病態で入院してくる患者もおり、
利尿剤など使用せずに退院する患者もいます。
あと時々びっくりするのが、
体重が増加したら受診するように指導しても、
実は体重計は自宅にありません、なんて患者も普通にいます。
・・・
話がそれましたが、
患者なりの症状・徴候の感じ方や、
病院に行かないとまずいと思うタイミング、
これらに関する理解は、普通に考えれば間違った理解と捉えられがちです。
しかし、これは患者がこれまでの療養体験の中で手に入れた知識と理解であり、
この行動を取ることが患者にとっての QOLを維持する方法であればどうでしょう?
いやいや、再発予防して、苦しまず、再入院しない方がQOL高いに決まってるじゃないですか、なんて声が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?
□「病人」という仕事に対するリスペクトを
心不全に限らず、不安定期と安定期を繰り返す疾患は、
基礎疾患に高血圧や糖尿病などが存在し、心臓に限らず長い療養経験を持っている場合があります。
そして、入院もせず症状のない病態を抱え、仕事を休んでまで病院にくる、
そして、管理が悪ければ「もっとがんばれ」と医療者にお尻を叩かれる。
こんな生活を続けていて、医療者の言うことを素直に聞こうと思えますかね。
むしろ、来たくもない病院に薬をもらいに来ているだけ優秀な方だと思いませんか。
患者は、長く辛い療養経験の中で、
自分なりのやり方で、病気を抱えた生活をしてきた、いわば病人のベテランです。
患者は患者なりのやり方で、病人という仕事をこなしてきたわけです。
そこに対する労い、尊重した態度は、
教育云々の前に重要なポイントです。
まずは、その病人として先輩である患者に対し、
看護師としてどのように関わればいいかを考えていく必要があります。
今回の心不全患者は、
良くなるための治療による影響で開始の麻痺が出たために仕事を続けられなくなり、
心不全のために無理もできず、体力も減っており、
病院に行く以外は、買い物をするくらいん生活だったりします。
患者とこれまでの療養経験や仕事でどんなことをやってたのか、なんて話をしていると、
いかに病気やその合併症が生活を崩して来たかが見えて来ます。
そして、仕事を続けるために満足のいく療養行動が取り辛いこと、
仕事を休みづらく、病院に来ることだけでも大変であること、そういったことが見えて来たりします。
長い療養経験があり、さらに入退院を繰り返している、
さらに医療者との関係もあまり良くない患者だと、こうやって過去の話や今辛いことをゆっくり聞いてくれる医療者もいないので、
話すことができると、それからは話が止まらなかったり、
冗談が混じって来る、なんてこともあるでしょうね。
ある意味、そういった関係の中で、病気だけではなく、通院や内服といった療養経験自体が大変だったことなどに寄り添えるようになると、
患者も、こちらが今後の生活を心配していることに、気を使ってくれるようになります。
お互いがお互いのことに気を使って話ようになると、
いい関係、パートナーシップを築けていることになります。
そうなって初めて、
患者が病気とさらにうまく付き合って行くためには、という話ができるようになります。
というのも、患者は、自分のことを心配してくれる人の言葉出ないと、自分のものとして受け取ることが難しいからです。
医療者が専門家だから、普通に信頼すると言うことはありますが、
患者が、この人は自分のことを心配して色々提案してくれていると思ってもらえるような関係作りは、
どんな疾患や時期の看護においても有効です。
□まとめ
今回は長い経過を持つであろう心不全患者をベースにお話をしています。
そういった患者の医療者への信頼の寄せ方はさまざまであり、
悪くなった時に頼る患者も入れば、
悪くなる前に頼る患者もいます。
症例の患者はおそらく前者でしょう。
そういった患者に対して、一般的な指導的関わりは抵抗されるだけで、
有効な指導は難しいです。
まずは患者が、この看護師の話を聞いてみたい、と思ってもらえる関係性作りが大事だという話です。
療養行動はよっぽど医学に精通している人でもない限り、
1人でそれをグレードアップし、継続していくことは難しいです。
なので、患者にとって看護師はよきパートナーであることが大事なんです。
そのために、まずは患者の体験している症状や、これまで療養について看護師から興味を向け、
患者が感じてきた辛さや大変さに関心を向けましょう。
指導はそのあとの方が間違いなく有効です。
では、元の生活を少しでも長く続けて行きたい患者と、
再発予防のために療養行動をしっかりとって欲しい看護師。
どのように自己管理行動を促していくのが重要なのでしょう。
というのが、2つ目のポイントです。
次回は、セルフケア看護における、自己管理行動を獲得するためのプロセスについてお話ししたいと思います。
普段は、専門看護師、心臓リハビリテーション指導士として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。