重篤な有害事象や院内の予期せぬ死亡は突然発生するのではなく60~70%の症例では、心肺停止の6~8時間前に急変の前兆(呼吸、循環、意識の異常・悪化)が認められる。
(患者急変対応コース for Nurse ガイドブック 中山書店)もしかしたら、看護師である僕らの異常の発見の遅れが、急変を招いたのではないか、
そう思う方は多くいるでしょう。それだけプレッシャーのかかる仕事なのです、看護師というのは。

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□急変という未来
急変が続いたりすると、疲労だけではなく、
もしかしたら自分が関わっていたことがその要因だったのではないかと不安になる。
自分たちに見えていない患者のサインやシンプトムズの見逃しの積み重ねが、そういった患者の急変を生み出しているとしたら、
単に良い経験でしたとは割り切れないものである。
では、何が出来るかと言えば、
相も変わらず患者の変化に敏感になれるように努めることと、
急変する前の異常を早期に気づけることが出来ることなのかもしれない。
□急変前の徴候を学ぶ必要性
しかし、個人的にあまり急変を前提とした勉強というのは気が乗らない。
それは僕の好き嫌い、食わず嫌いのような部分。
僕は体ではなく人について学び、そこから看護を考えたいのかもしれない。
でもそれ以外のところで、健康で元気な人と関わっていたいというのが、
心の底の願いであるのだろう。
どちらにしてもそういった患者自身が急変前の異常の早期発見”力”は身につけるためにも、僕自身が病態的特徴についても学ばなければとは思う。
看護師の仕事は法律上、診療の補助と療養上の世話とされるが、
その中で、異常の早期発見は大切な能力の1つである。
特に療養上なんらかの課題を抱えていることで
そういった異常ではない段階の”気付き”に対する賞賛や報酬は基本的にない。
残念ながら。
そして、能力の差もあるし、気づける人は僕らの気づかないところで気付いている。
それによって予防できていることがあるかもしれないと、もっと真摯に受け入れいれることが大事だよね。
□看護としての看護業務
しかし看護師の仕事というのは本来そう言った物ではないかと思う。
日々の業務かされたルチーンな作業の1つ1つであってもだ。
清潔ケア1つにしても、患者のニーズを満たすことで精神的ストレスを緩和し治療に積極的になる、家族のケアの負担が減る、褥瘡になる前に皮膚トラブルの予防が出来る。
そういった何気なく行っているかもしれない看護師の仕事の1つ1つはあえて誰かに賞賛されたり対価を求めるといったものでもないし、生産的な物ではない。
むしろ、次の患者目標を鑑み、そういった一つ一つの関わりに対して意図的に、目的的に関わるのが、介護士や家族に代わって療養上の世話を行う理由でなければならないし、
それができない、もしくはやりたくないなら看護師であるべきではない
ケア1つ1つが知識や技術に裏付けされた価値のある物ととらえることも出来るが、それだけそういったことを意識して仕事をしている看護師がいるかということに関しては疑問がある。
つまり異常の早期発見といったことにも結びついてくるが、
1つ1つの看護がそういった生産的なものでは”ないもの”の積み重ねである。
同時に、行われた看護ケアが目に見えない未来の患者に影響し、病気の悪化を防ぎ、治療の手助けとなっていることを意識しないと看護とは呼べないのかもしれない。
□アンサング・ヒーロー
内田樹先生は「街場の憂国論」のあとがきで、アンサングヒーロー、歌われざる英雄についてふれている。
「アンサング・ヒーロー」たちの報われることのない努力によって僕たちの社会はかろうじて成立している。彼らのおかげで、この社会はきわどいところで破滅のふちで踏みとどまって、とりあえずの安寧を保っている。
「アンサング・ヒーローって、けっこうあちこちにいるよね(私だって、もしかしたら、それと気付かないうちに世界を救っているのかもしれない)」という信憑が集団的に共有されている社会は、そうでない社会よりもあきらかにリスクの少ない社会になる。これは間違いがありません。
(街場の憂国論 内田樹 晶文社 p350-351)
たまたま見つけたゴミをひろう、あいてた穴を塞ぐ、雪をかく、患者と笑って話す。
そういった何気ないことが、もしかしたら事故を防いだりしているかもしれないとは誰も想像つかない。
しかし、現実たまたまやってたから起こることのなかった事件・事故という物は存在したはずである。
それが病院における事故や急変であったかもしれない。
僕らが普通にまじめに働く理由としてこれ以上の理由はないのではないだろうか?
それが気付かずうちに患者のためになってればいいし、それがアンサング・ヒーローなんでしょ?
そう思ってるだけでかっこいいし、テンションがあがる。
そしてそれがまた勉強へのテンションをあげる。
そしてその生産的ではない行為の1つ1つや意識が、
気付かずうちに他の人に影響を与えていたらいいな、
なんて思いながら今日も机に向かう。
専門学校卒で10年目に専門看護師になりました。 普段は、専門看護師として働きつつ、料理や栄養の知識なんかをInstagramやブログを使って発信しています。「はじめまして」はこちらから。